泡が四十三 ページ43
「はぁ、暇だなあ」
Aは窓の外を見乍ら呟いた。
事件以来、外に出る許可は下りず、任務さえ与えられていない。
珍しく織田が建物の付近に居て、手を振り合ったが、それも何十分前の事だろう。
「暇で死んじゃう。エリスは首領と一緒、中也は仕事。太宰と芥川は最近忙しそうだし、あ、織田作もだ……独り言って寂しい」
大人しく自室へ帰ろうと振り返ると、着物姿の綺麗な女性が居た。
「姐さん!」
「A、久しいのう」
口角を上げ上品に微笑うのは、幹部の一人、尾崎紅葉であった。
同じ女性と云う事もあってか、何かと気にかけてくれる。
彼女にとって、母の様な姉の様な存在だ。
「暫く外に出られておらんようじゃが」
「……色々、やっちゃったから」
「っふふ」
「何?」
口元を袖で隠して、紅葉は声を漏らした。
Aにとっては何が何だか判らない。
「主も成長したのう。前は事ある毎に我らが首領の悪口を言うておったが」
「酷い!姐さんまでそんな事云うんだ」
「誰に云われたのじゃ?」
中也ーーと答えようとして、ある晩の出来事が蘇った。
熱い口内で暴れ回る生温かいモノ。ぞくりとした感覚、漠然とした"男"の味。
かっと火照った顔を紅葉が見逃す筈も無く、
「何やらあったようじゃのう」
「えっ、否、何も」
「隠しても無駄じゃ。ふふ、愛いのう」
細長い指が頬に添えられ、優しく擽る。
その感覚が心地好い。
強請るように自らも頬を擦り付けた。
「誤魔化すんだ……」
「先に誤魔化したのは何方じゃ?」
「うっ」
「まあ良い、深くは訊かぬ。どうじゃ、茶でも飲むかえ?もてなすぞ」
「うん!姐さんの淹れてくれるお茶は美味しい」
満面の笑みで答えた少女を、尾崎は優しく撫でた。
此れから起こる事を知らない、無邪気な少女を。
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京beスウィーツ(プロフ) - おきリンゴさん» 済みません。存じ上げなかったので、調べさせて頂きました。まどマギの登場人物なのですね(違ってたら済みません!)。そんな立派なお話しは書けませんが、また見て頂けたら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月17日 18時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
おきリンゴ - 人魚姫… さやかを思い出してしまった… (2017年9月13日 22時) (レス) id: 8fe98c431a (このIDを非表示/違反報告)
京beスウィーツ(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しい限りです!更新は遅くてご迷惑をお掛けするかも知れませんが、最後まで頑張りたいと思います。応援ありがとうございます! (2017年6月25日 11時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
マイ - とても面白くて更新楽しみにしてます!これからも頑張ってください!! (2017年6月17日 8時) (レス) id: 1068f74b75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年4月2日 17時