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泡が三十七 ページ37

「首領との話如何だったんだ」

「本当に最悪だった」

「お前なあ……そうじゃなくて」


中原は彼女と首領の不仲を知っているが、深い訳までは知らない。
ある状況下では彼女の我儘に首領が翻弄され、また別の、今回のような状況では首領の命に彼女が翻弄される。
また時折首領が見せる親のような顔の意味も判らない。


太宰なら知っているかもしれないが。


中原はこうして彼女から直接聞き出し、できる限りを尽くして、この憐れで愛おしい少女を慰むことしかできないのだ。


「詳しく話せ」


そう云って額同士を合わせると、Aは観念したかのように、ポツリポツリと話し始めた。

内容は、ただの親子喧嘩、先生と生徒の衝突、大人と子どもの違い、其の程度のものであった。
何時もならここで何かしら言葉をかけて終わるのだが、中原は違和感を覚えていた。


「それだけなら何時もはこんなに沈んでねぇぞ」

「なっ、それだけって!私だってそーゆー変化はあるんだけど?!何時までも子どもじゃないんだから……」


ムッとして頬を膨らます姿は如何見ても子どもだ。
而も容姿以上に精神は幼い。


「云えば俺も手前を大人扱いしてやる」

「だからっ!何も無いンだッてば!」


憤慨して上目遣いに睨みつけるAに、中原の心の何かに火がついた。

Aの長い髪を指の隙間に流し乍ら後頭部を抱えて引き寄せ、上体を折り曲げ、


「云えよ」


彼女の耳に直接、低い声を注いだ。

ピクリと反応したのが手越しに伝わり、中原の心中の、所謂“加虐心”は更に燃え上がり、愉悦の笑みを浮かべると、Aを腕中に収めて転がり、そのままベッドに押し倒した。


「中也?!」


長く綺麗な黒髪は白いシーツに広がり、何時も強気な顔は朱に染まっていた。


「なァ、“大人の”お姫様?」


綺麗なオレンジの髪を垂らし、口角を上げ、楽しげな瞳で問いかける中原は、彼女には悪魔のように見えた。


というか、中也だってまだ大人じゃないじゃん!

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京beスウィーツ(プロフ) - おきリンゴさん» 済みません。存じ上げなかったので、調べさせて頂きました。まどマギの登場人物なのですね(違ってたら済みません!)。そんな立派なお話しは書けませんが、また見て頂けたら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月17日 18時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
おきリンゴ - 人魚姫… さやかを思い出してしまった… (2017年9月13日 22時) (レス) id: 8fe98c431a (このIDを非表示/違反報告)
京beスウィーツ(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しい限りです!更新は遅くてご迷惑をお掛けするかも知れませんが、最後まで頑張りたいと思います。応援ありがとうございます! (2017年6月25日 11時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
マイ - とても面白くて更新楽しみにしてます!これからも頑張ってください!! (2017年6月17日 8時) (レス) id: 1068f74b75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年4月2日 17時

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