泡が三十六 ページ36
一人。
ベッドに蹲りながらAは考えた。
“あたしはAの歌が聞きたいわ”
自然と手が喉に伸びた。
彼女の異能は脅威だが、その歌は薬にもなる。
異能の出力が調整できるため、ただ単に歌を歌うという行為ができるのだ。
彼女は歌が上手い。
聞き手の心を絡め取り優しく解す。
もし、此の異能がなければ自分は幸せな人生を、他人に幸せを与える人生を送れていたのだろうか?
否、此の性格では無理があるだろう。
では、もしこの世から自分が消え去ったとしたら――――幸せな人生を送れる人は増えるだろうか?
嗚呼、屹度増えるに違いない。
何故ならこの先自分はまだ人を殺すだろうから。
其の考えは精神操作の異能が未だ残っていたためではない、元より彼女が抱いていた思考が異能をきっかけにして大きくなったのだ。
それなら、私は――――
コンコン。
不意に扉が叩敲され、
「A、居るか?」
「ちゅ、や……」
「入るぞ」
少し髪の湿った中原が入室した。
服装は何時もの洒落たものではなく、黒のYシャツにジーパンというラフな格好だった。
「……お疲れ様」
シャワーを浴びた後だった中原から僅かに漂う、錆びた鉄のような臭いを嗅ぎ分けたAがそう云うと、中原は苦笑する。
「悪ィな。ちゃんと落としたつもりだったんだが」
「どうせ仕事から直帰してシャワー浴びて直ぐ来たんでしょ。髪も未だ濡れてるし、洗い方雑だったんだよ」
「お前、云うなぁ」
中原が笑みを崩し、彼女の隣に腰掛ける。
「お前こそ、お疲れ」
ふわりと頭を撫でると、Aは中原に凭れ掛かった。
121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京beスウィーツ(プロフ) - おきリンゴさん» 済みません。存じ上げなかったので、調べさせて頂きました。まどマギの登場人物なのですね(違ってたら済みません!)。そんな立派なお話しは書けませんが、また見て頂けたら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月17日 18時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
おきリンゴ - 人魚姫… さやかを思い出してしまった… (2017年9月13日 22時) (レス) id: 8fe98c431a (このIDを非表示/違反報告)
京beスウィーツ(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しい限りです!更新は遅くてご迷惑をお掛けするかも知れませんが、最後まで頑張りたいと思います。応援ありがとうございます! (2017年6月25日 11時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
マイ - とても面白くて更新楽しみにしてます!これからも頑張ってください!! (2017年6月17日 8時) (レス) id: 1068f74b75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年4月2日 17時