泡が二十五 ページ25
太宰の言葉にAは衝撃を受け、無意識にわなわなと震えだした唇をぐっと噛んだ。
だから嫌いなのだ。
何時もこうだから。
私の為というのは建前で、善良な振りをして、結局自分の思う通りに事を進めたいだけ。
握り締めた拳が痛かった。
ふと目に映った、何時かの壁の傷跡に無性に苛々した。
その手を、太宰が握った。
「A、気に食わないのは判るけど、此の事については私も賛成だよ。君は私と中也とエリス嬢以外の世界も知るべきだ」
「外には出して呉れないのに」
言ってからハッとした。
今回の件は完璧に自分の自覚の足りなさだと反省したばかりである。
眉根を寄せて太宰を見上げた。
「厭だなァ、そんな顔しないでって言ったばっかりじゃないか」
未だ泣きそうな顔をするAの頬を包んで、
「何時か……屹度自由にしてあげる。何時になるか判らないけど、待っていられるかい?」
二人の額が重なった。
太宰の蓬髪がくすぐったくてAは軽く目蓋を閉じる。
「太宰、くすぐったい」
「ははは、御免ね」
「もう……」
彼女は呆れたように笑ってみせた。
彼に心配をかけない様に。
「太宰、私待ってるよ。約束だからね」
「嗚呼、約束だ」
太宰は存在を確かめるように、手中のAの手を一層強く握り締めた。
121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京beスウィーツ(プロフ) - おきリンゴさん» 済みません。存じ上げなかったので、調べさせて頂きました。まどマギの登場人物なのですね(違ってたら済みません!)。そんな立派なお話しは書けませんが、また見て頂けたら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月17日 18時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
おきリンゴ - 人魚姫… さやかを思い出してしまった… (2017年9月13日 22時) (レス) id: 8fe98c431a (このIDを非表示/違反報告)
京beスウィーツ(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しい限りです!更新は遅くてご迷惑をお掛けするかも知れませんが、最後まで頑張りたいと思います。応援ありがとうございます! (2017年6月25日 11時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
マイ - とても面白くて更新楽しみにしてます!これからも頑張ってください!! (2017年6月17日 8時) (レス) id: 1068f74b75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年4月2日 17時