泡が十七 ページ17
「太宰ッ……中也……」
猿轡を外して貰って直ぐ、信頼を置く二人の名を呼んで、Aは涙を一筋流した。
其れは年頃の少女らしい反応ではあったが、彼女にとっては異例だった。
両親を殺され、敵を鏖殺し、銃を使った時の反動に耐え切れず肩が脱臼した時に泣いた。
見知らぬ会社に連れられて、訳も判らぬ儘閉じ込められて泣いた。
理由を知って、自分の特異性に、行き場の無い怒りの為に泣いた。
が、宿命を受け入れてからは泣かなかった。泣かぬと決めた。
自分は他の少女と違うのだ。容易に泣ける立場ではない。
そう思う事で少しは自制が効いたから。
然し、今、泣いた。
任務で危険な目に遭った時も、大怪我を負った時も平気だったのに。
若しあの男の言葉に頷いていたならば、自分から"物"に成り下がっていたのだ。
其の可能性が有ったと云うだけで酷く恐ろしく感じた。
今迄我慢して来た何かが、誤魔化して来ていた何かが弾けそうで、怖くなった。
「A、よく頑張ったね、怖かったろう。もう大丈夫だよ。ほら、帰ろう」
差し出された手は、彼女を"人"と認めている様で。
水面下から見える朧な日光に焦がれる様に、彼女は太宰の手を取った。
そして直ぐに抱き締められる。
温かさに包まれて、涙が止まらなかった。
「ごめん、なさい」
「手前が謝る事じゃねえだろ」
ぽん、と頭に中原の手が置かれた。
優しく一撫でされると、身体がふっと軽く成る。
「中也……」
「今日は特別だ。よく耐えた」
珍しく微笑んだ中原に、Aも微笑み返した。
「と云うか、何でAに触ってるの」
「あ？」
「今のは私が負ぶっていく流れだったでしょ、其れを君は！流石空気読めないね」
「巫山戯んなよッ、太宰……俺ばっか雑用に回しやがって！」
「はいはい聞こえなーい。私の耳に届く位には成長したら如何だい？」
「手前ッ！」
騒がしい遣り取りに如何してか心が静まるAであった。
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京beスウィーツ(プロフ) - おきリンゴさん» 済みません。存じ上げなかったので、調べさせて頂きました。まどマギの登場人物なのですね(違ってたら済みません！)。そんな立派なお話しは書けませんが、また見て頂けたら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月17日 18時) (
レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
おきリンゴ - 人魚姫… さやかを思い出してしまった… (2017年9月13日 22時) (レス) id: 8fe98c431a (このIDを非表示/違反報告)
京beスウィーツ(プロフ) - マイさん» コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しい限りです！更新は遅くてご迷惑をお掛けするかも知れませんが、最後まで頑張りたいと思います。応援ありがとうございます！ (2017年6月25日 11時) (レス) id: 35074ef1fd (このIDを非表示/違反報告)
マイ - とても面白くて更新楽しみにしてます！これからも頑張ってください！！ (2017年6月17日 8時) (レス) id: 1068f74b75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京beスウィーツ | 作成日時：2017年4月2日 17時
