ワンコとボクのあいだに。 (ページ37)

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orange side

「アイツには読めんねや」「腹立つわぁ」ってブツブツ文句言うた思うたら、最後フッと笑った。

「…そろそろ時間か」
「ほなまたな、マル」

「ま、待って」

頭ポンポンと撫でられて。
僕から下りようとしたすばるの腕を咄嗟に掴む。

「き、昨日より時間短ない？」

「んー、せやなぁ」
「心通い合ってる時間少なかったし」

「…それを補うんがキスであって」
「そのキスさえも拒否られてもうたからなぁ」

「……」

「次はいつ会えるかなぁ」

「…じゃ、行くわ」

「ま、待って待って！」

掴んだ手首に思いっきしチカラを込めたら「痛い痛い」ってすばるが顔を歪めた。

「…わかった」
「キスするから…」

「せやからもう少しだけ…一緒にいて」

「……」
「…エエの？」
「オレとはキスしたくないんちゃうん？」

「……」

頭の中で少し混乱した。

僕は…すばるとキスしたくないワケちゃう。

寧ろすばるの事はもっと知りたい思うてるし。
すばるとの時間をキスする事で補えるんであれば、いくらでもそうしたいと思うてる。

せやけど…行動となればどうしても引っ掛かる。
過去の…あの出来事さえ無かったら。

「ま、エエわ」
「今のマルの心読んでたら、オレまでぐっちゃぐちゃなってまう」

「…ゴメン」

すばるはニッと笑うと、両肩掴んで僕の身体を起こした。
首元にすばるの両腕が絡まったら、少し低い位置から僕を見上げた。

「マルの過去に何があったんか知らんけど」
「少なくとも今は…オレの飼い主、やろ？」

「飼い主…」

再認識した、僕とすばるの関係。
せや…今の僕は「すばる」と言う名の子犬の飼い主。