ワンコとボクのあいだに。 (ページ4)

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purple side

「で、まぁサインした後聞くんも変な話やけど」
「こんな安いって、まさか事故物件とかちゃうやろな？」

この場所でこの家賃って。
通常の相場より10分の1以下って、そんなん絶対何かあるとしか思えへん。

「はは、そんなんちゃう」
「ただなぁ、1個だけ頼み事あんねん」

「おーいエエで、こっちおいで」

オッサンがパンパンッと手ぇ叩いたら、リビング入口のドアが静かに開いた。

ワン、ワン

「…なに、犬？」

入って来たのは、茶色い毛並みの可愛らしい小型犬が2匹。
威勢がエエのと、睨み利かしてんのと見るからに個性的なヤツら。

「うわ、めっちゃ可愛らしいやん？」
「おいで、コッチコッチ」

マルが手招きしたり手の平上に向けて誘うけど、威嚇したり興味なさげやったりでなかなか近寄って来ぉへん。

「コイツらな、お前らで飼って貰いたいねん」
「それがワシの出す条件や」

「へ？」

「世話すんのがメンドくなったからって、放置したり捨てたりしたらアカンで」
「…コイツらな、愛情に餓えとうから」

「……」

あぁ、オッサンの拾い犬か。
せやけどもう年やから、育てる事が出来へんてクチやな。

なかなかエエトコあるやん？って見直したら、こんな些細な事でエエ家住まわせて貰うんやから悪く無い話に思えてきた。

「おん、わかった」
「コイツらは俺らが責任持って育てるから」

マルも頷いたら、「頼んだで」って言葉を残してオッサンは家を出て行った。