ワンコとボクのあいだに。 (ページ17)

今日:22 hit、昨日:0 hit、合計:109,298 hit

17 ページ17

orange side

「まぁ、そんな感じやから」
「そろそろ疲れた、寝る」

目元ゴシゴシ擦りながら、ベッドの上で眠りの体制に入ろうとするから咄嗟に両肩掴んだ。

「…1つ、1つだけ教えて」
「ペロはアカンのやったら…人間の名前、は？」

「んー？」
「ペロでエエよ…そのうち慣れるやろ…」

「アカンて」
「ホンマの名前知った方が…もっと近付ける思うから」

「…人間に戻してあげたいねん」
「僕なんかにそんなん、出来るかどうかわからへんけど…」

「ペロがその…可哀想やから…」

「……」

どうにか瞼が開いてる状態で僕を見ると、フッと口元を緩ませて僕に顔を寄せて来た。

「…ペロ？」

「あんがと、マル」
「俺のホンマの名前は…」

……

ﾁｭｯ

「ふっ…！」

顔の真ん前でポツリと囁いたら、僕の唇に触れるだけの軽いキスをした。

ビックリして肩から手を離すと、微笑んだまま崩れ落ちるようにしてベッドの上に倒れた。

スゥ…スゥ…

犬が寝る時みたいに身体を丸めると、即座に寝息が立つ。

まだ…僕は夢を見てるんやろうか。
いや、ここまでリアルな夢も無いやん？

目の前に横たわって気持ち良さそうに眠る姿を眺めてたら、自然と手が伸びて髪を撫でる。

『俺のホンマの名前は…すばる』

「すばる…」

なんで犬の姿になったのか。
どうやったら人間に戻れるのか、肝心な事いっぱい聞き忘れてるけど…。
今は穏やかに眠るすばるの身体を、僕も眠りにつくまでずっと撫でていた。