紅の影を2 (ページ9)

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57.からかうページ9

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「まあ少し落ち着きなよ。セフン？」

「はーい」

『落ち着きなよって…、あんたがいきなり噛み付いてくるから…！』

「ああ、そうだった」

なにかを思い出したように、そいつはポンっと手を叩くと、また、俺に近づいた。さっきのことから少し警戒した俺は、一歩後ろへと下がる。

「あはは、そんなに警戒しなくてもいいよ？」

『よくそれが言えたな！』

「はいはーい、大人しくする」

グッと身体になにか力が働いたかと思うと、また身動きが取れなくなる。焦る俺をよそに、そいつは近づいてくると、さっき噛み付いたそこに手を当てた。

と、ぽわっと瞳に深い緑がやどる。

その瞬間、首筋には温かみを感じて。その人は俺の首筋を眺め、満足そうに笑うと、それからすぐに俺から離れた。

「無事に治りましたよーっと」

『え！？』

言われるがまま、そこに目をやれば何事もなかったかのように、傷は綺麗に消えていた。これって、治癒、だよな…？

治癒の能力を持つヒョンを、俺は、1人しか知らない。

『…イシンヒョン？』

「ん？イシンを知ってるの？」

「クリムヒョン、わかっててヒョンをいじめちゃダメですよ」

そんなセフンの言葉に、はーい、なんていたずらっ子のように笑う。

「それにしても、ヒョンの能力って、本当に光だったんですねぇ」

ほええっと感心したようにそう言ったセフンの手にはお盆があって、その上にはゆらゆらと湯気を立てるティーカップが３つ。

『本当に光って、お前なんだと思ってたの？』

「いや、能力自体あるのか謎だったんで」

シレッとそう言いながら、はい、どうぞ。なんてティーカップをひとつ渡してくる。その中身はどうやら紅茶らしい。

同じようにあの男もティーカップを受け取ると、優雅にそれを口に運んでいた。

「ん？俺が、気になる？」

『…まあ、』

「ごめんね、俺男はちょっと…、」

『そういう意味じゃないから！！！』

「あはは、冗談だよ」

笑ってそういうけど、ちょっと待って？さっき俺に噛み付いたよな？男がダメってことが、もしかして冗談？え？

「クリムヒョン、そろそろベギヒョンがとんでもない誤解を始めてるので、いじわるしないで本当のこと教えてあげてくださいよ」

「あはは、だってからかうの面白いんだもん」

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