紅の影を2 (ページ26)

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74.黒い雫ページ26

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知らなかった。
自分がこんなにも情けないってこと。

震える手を包むように握って、そっと自分のひたいに当てる。ごめん、ごめんな。どうして、俺の能力は誰かを救えるものじゃないんだろう…？

大事な時に使えなければ、能力なんてあってないようなもの。

と、握っていたチャニョルの手がそっと俺の手を離して、それから割れ物を扱うようにほおをなでる。顔についたススと流れる汗で汚れる手。

「…泣くなよ、」

『泣いてないよ』

「そっか、」

そう言ってその大きな手で俺の目元を拭った。

それがきっときっかけだった。一筋だけ、しずくが溢れてしまったのは。それを彼が見て見ぬ振りをしてくれたのかはわからない。顎を伝ってぽたりと隊服に流れ落ちたそれは、黒く濁ってた。

「…チェン、自分がこの任務に選ばれたわけを忘れたわけじゃないだろ」

『～っ、』

「俺たちは、‘紅’だ」

その声は、強く芯があった。

目の前にいるのは、怪我人でもなく、チャニョルでもなく、紅の一員。EXOのチャニョルだった。

「特別な能力を持ち、民を守るために選ばれた人間だ。俺たちはみんなの平和のために存在してる。だから…、だからさ、」

『…、』

「俺が平和を脅かす存在になっちゃいけないんだよ」

はっと短く息を吐いた。

少し無理をしすぎたのか、息が短い。

俺が今回この任務に選ばれた理由は、ひとつ。ここに来る前に2人で話したあの理由。命令を絶対に守れる人間だということ。

だからこそ、チャニョルは俺にあの決まりを実行しろというし、そして俺も。心では嫌だと思っていても、頭のどこかで実行しなきゃいけないという事実をしっかり受け止めている。

『…俺は、誇りに思うよ』

そっとチャニョルの身体を地面に横たわらせる。

誇りに思う。

お前のことも。

お前の最後の任務に関われる俺自身も。

そして、俺たちEXOを。

「EXO、サランハジャ」

『…サランハジャ』

ライトセーバーを腰からぬいて、刃を出す。白く光るそれを初めて見た日をどうしてだか思い出して。先に刃を出せるのはどっちだなんて競争したのに、あっさりギョンスが一番乗りだったよな。

キュッとライトセーバーの肢をにぎる。
チャニョルは優しく笑ってた。

「…ありがとな、ジョンデ」

『うあああああああああ！！』

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