紅の影を2 (ページ15)

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63.ヤツの弱点ページ15

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『っ、』

ガツンと頭に走った衝撃に思わずよろける。
隙なく、そのまま殴られる腹。拳が鉄になっているのか、その衝撃は重い。

『かっは、』

ドサリと地面に投げつけられ、床に転がる。

上を見た瞬間、見えたのは振り下ろされる鉄の塊。ガン、と鈍い音がして目の前のガラスが、へこむ。再び訪れるであろう二回目の衝撃をギリギリのところで避けた。

気休めにしかならないだろうけど、今度は俺の周りに炎の壁をつくる。さっきのよりは壁の高さと炎の温度を上げておく。

態勢を立て直そうと起き上がる。くっそ、殴られたせいでヘルメットの暗視機能が死んでやがる。荒っぽくヘルメットを外せば当然、部屋の様子がわからない。

力任せにヘルメットを壁の向こうへと放り投げた。

部屋の至る所に炎を宿す。家を燃やしてしまうのは心苦しいけど、なにも見えないよりはマシだ。炎のおかげで周りが見えるようになった瞬間、飛んできた鉄の塊。

炎の壁を消すことはせずに、相手は鉄の刃をいろんな方向から投げつけてくる。自然と高くなっていく部屋の温度と、避けるために走っているせいで、額から流れ落ちる汗が止まらない。

このままじゃラチがあかない。
どうにかしなければ。

どうにかするってどうやって？そうだ、相手は鉄だ。熱に弱いはず。じゃあ、炎で溶かしてみるか？いや、そんなことしたらきっとなにも残らないだろう。俺はあいつを殺してしまう。

それじゃあ、ダメだ。

熱に弱い鉄なら、暑さにも弱いのか？自分自身に置き換えて考えてみろ。俺自身、氷や水が苦手だろ？なら、相手も熱に弱いんじゃ？

もしかして、だからあいつは部屋の中に俺を誘い込んだのか？

外にいれば、陽が暑いから。それだけで力が弱くなる？いや、まさかな。そんな単純な理由か？でも仕方ない。考えているだけじゃきっとどうにもならない。実行、あるのみ。

俺は空気を吸い込み、肺の中に止める。

そしてそれから、それを思いっきり吐き出す。俺の肺にたまった空気は熱を持ち、熱風となる。セフンがいればかなりの勢いの風になるんだけど、単独じゃ威力はこんなもんか。

むん、と上がった部屋の温度。
さあ、その効果は？

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