紅の影を2 (ページ2)

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50.捕まったのはページ2

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俺の言葉に満足したように笑うA。

逃げる場所などない。やるか、やられるか、そのどちらかの世界。部屋の隅に転がったナイフを力で手元に運び、強く握りなおす。

と、宙に浮かぶベットの破片をAに向かって飛ばした。

それを避けるAに近寄り、同時にナイフで切りつける。特設ステージといっただけあって、Aは炎の壁から出ようとはしなかった。限られた範囲内でひょいひょいと攻撃を避ける。

「この炎の暑さと、その攻撃の仕方、おおむね、俺の体力消耗を狙ってる感じ？」

避けながらもそんなことを話すA。面白い。まだ、余裕があるらしい。仕方ない、一気に仕掛けよう。

最大限に意識を集中させると、一気に力をAへと解放した。

「！！」

のしかかるような重みに、さすがのAも少し驚いた表情をする。その一瞬の隙をついて、すぐさまAに近寄った。

だけど、思いの外、身体が軽くは動かない。

切りつける余力がないことは、十分にわかっていた。だから、ポケットから取り出したそれを、カチャンとその細い手首につける。

自分のその腕を見て、面白そうに俺を見たA。

その瞳は、綺麗な紺色をしていた。

『…捕まえた』

その言葉を聞いて、にやり。笑う。

なんだろう、力のせいで、Aは身動きを取れないはずなのに、俺の方が今は有利なはずなのに、その余裕はどこから来るのか。

「ふふ、」

『なにが面白いの？捕まってるのに』

「いや、ちょっとね？」

シャラリ。俺とAを繋ぐ手錠のついた腕が、勝手に動いた。

『…え、？』

「捕まったのは、どっちだろうね？」

その言葉を最後まで聞くこともなく、気づけば、俺の身体は見事に宙をまっていた。バシン、と背中に伝わる衝撃。見えるのは、白い天井。だだそれだけ。

投げられた。
その事実はすぐに理解できた。

『…やっぱ、お前バケモンだわ』

こほ、と少し咳き込みながらそういえば、クスリとAは笑った。

力の使いすぎで、動かない身体。それだけ、Aに力を向けたというのに、簡単にあいつは俺を投げた。力を緩めてなんかいないのに。

「これで俺も、ルハンの仲間入りかな？」

その声が、ひどく楽しそうだったのを俺はこの先一生忘れないのだろう。

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