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一瞬だけ曖昧になった焦点は、オレの背中を見つめる人に合う。
何も言わないオレに一歩近づく。
横に立って俺を見るその人の横顔を、ガラス越しに見つめた。
外の光が反射する。
さっきよりも鮮明になる。
「…何もかも」
何もかもが綺麗だった。全部が、痛いくらい。
「君は？」
横を向けば、交わった視線の先。彼女の目の奥がゆらりと揺れる。
「…もう見たくないくらい綺麗です。」
「だからそんな寂しそうな顔しないで。」
彼女が続けた言葉で、一つ目はオレに向けての言葉だと気付いた。
そして彼女も、オレの最初の言葉は彼女へ向けた言葉だと気づいているようだった。
オレにも君がそう見えるように、君にもオレがそう見えていてよかった。
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作者名：椿 | 作成日時：2021年9月20日 21時
