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15 また明日 ページ15
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お邪魔します。
なんていう言葉は出なかった。
どうぞ、と彼女が言うこともなかった。
薄暗い部屋の奥に見えたぼんやりとした光に、明かりをつけようとした彼女の手を止める。
気を付けてくださいねと言ってどこか違う部屋に入って行った。
その意味が明かりをつけていないからなのか、それとも別にあるのかは知る由もない。
引き寄せられるように足を踏み出した。
一歩ずつ近くなる光に、恐怖と期待が交わる。
ようやく視界一杯に広がったのは見たことのない景色だった。
宿舎とも、何処かのホテルとも、橋の上とも違う、夜の街。
ガラスの向こうにある世界は、本当についさっきまでいたところなのだろうか。
すべてが冷たく突き刺すようだった光が、今はぼんやりと何かに包まれて見えた。
そんなやさしさを見せられても、もう遅いのに。
世界の淵に立った瞬間に手を伸ばしてくる世界は、なんとも皮肉だ。
今まで何度も救いを求めてきたのになんで今になって生かそうとする。
結局、最後はまた淵に追いやるのに。
それをわかっていながらも、希望に飢えたオレはいとも簡単にその救いを受け入れるんだろう。
「綺麗ですか？」
これが、最後の救いかもしれないから。
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作者名：椿 | 作成日時：2021年9月20日 21時
