お団子頭のメイクさん (ページ8)

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「ヒョンヒョン、聞いて聞いて」

メイクも終えてソファーに座っているといつものようにドサッと隣に座ったヘチャン。

心なしか元気がない。

「Aヌナ、手怪我しちゃったんですよ」

「ああ、」

「…なんすかその反応」

「知ってたから」

つまらなさそうにふーんと言いながらも話は続ける。

「怪我治るまではスキンケア系は全部ハリヌナがやるらしくて」

ハリヌナ、たしか彼女のアシスタントさんだった気がする。

口を尖らせているのはアシスタントさんに何か不服があるのだろうか。
けどメイクをするのは彼女だし、スキンケアも彼女の指示に従ってやるだろうに。

「なんか嫌なの？」

「いや別にハリヌナに不満とかじゃないんですよ。ただAヌナのスキンケアめちゃくちゃ気持ちいいからさ。」

「気持ちいい？そんなに変わるもん？」

もー分かってないなと足をジタバタさせる。

実際今まで何人かのメイクさんにやってもらってきたけど、そこまで変わらない気がする。
ていうのはみんな気持ち良かったって意味でね。

「ヒョンはしてもらったことないもんね」

「うん、どんな感じなの？」

「よくわかんないんですけど、なんかヌナの手でしてもらうスキンケアって一味違うんですよ。」

「何それ」

「肌がトュルントュルンになるっていうかトランポリンみたいになるっていうか」

よく分からない例えに疑いの目を向ける。

「ほんとに経験すれば分かりますよ～」

オレの肩をぽんぽんと叩いてジョンウのメイクをしている例の彼女の元へ駆け寄っていったヘチャン。

去り際の勝ち誇ったような顔が何とも憎たらしい。

メイクをしている最中の彼女に話しかけるなんて面倒くさい奴だな。

「…あ、」

なんだ、全然大丈夫じゃないじゃないか。

鏡越しに彼女を見つめていると、少し映った手の平。

小さめの絆創膏がたくさん重ねて貼られていた。

　

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