【K】闇夜の中の少年【男主】 (ページ39)

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溢れ出す世界ページ39

青い服を見つけた紫城は
その小さな体を引き寄せる

彼女から溢れる感情が
世界が広がっていく

溺れる様な息苦しさ
触れた箇所から駆け抜ける痛みと熱さ

眉をひそめ、紫城はそれらの痛みに耐えながらアンナを抱き締めた

「…助けて…」

小さく紡がれた言葉に
紫城はその小さな背中を撫でる

“徴”をもらった時と似た感覚が右腕を駆け抜け
紫城は意識を深く集中させる

この感応力はアンナの力だ
今朝の十束の指先を見て、紫城はこれを外に漏らしてはならないと判断した

彼女が押し止めている世界
獰猛な獣を内に飼っている周防に惹かれる意味を、なんとなく理解出来た気がした

「大丈夫、大丈夫だよアンナ。
助けてくれるから、吠舞羅が」

世界のあらゆるものを見て、感じ取る
外の世界を、自分の身の内に取り込む

身の内にあるものを外へ流出する

全て、アンナの能力だ

「ごめん…ごめんね、アンナ。
こんなに苦しい思いをさせて…君にたくさんのものを背負わせて」

アンナの世界と同調できるように
紫城はゆっくりとアンナの背中を撫でる

落ち着かせ
その世界を自分に向けて

その度に襲う痛み
呼吸困難に意識が飛びそうになるのを耐えながら、紫城は強くアンナを抱きしめる

やがて落ち着いた力にほっと息をついて
紫城は意識を失ったアンナを抱え上げた

「1人になんてさせないよ」

助けると決めたから

酸素の足りない肺が苦しく
左肩が痛み
右腕が熱かった

それでも、絶対に

この手は離さない

「また君か」

「…アンナを、連れ戻しに来たのか」

「ああ。
…けれど、君はお呼びでない」

「っ、アンナ！」

力の入らない紫城からアンナを引き離し
青服によって紫城の体が組み伏せられた

咳き込んだ紫城は
遠のく意識の中、確かに聞いた

「…そいつも連れてこいとのことだ」

プツリと、そこで紫城の意識は途絶えた