【K】闇夜の中の少年【男主】 (ページ29)

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苦渋とはページ29

「セプター4、湊速人」

「同じくセプター4、湊秋人」

「「我らが大儀に曇りなし」」

戦闘態勢に入った双子に対し
スケボーに足を置いた八田と
その横で伏見がナイフを構える

「…伏見」

「わかってる。ただ、話を悠長に聞いてくれそうにはないぜ」

「上手くやれよ」

「いいから、行け」

紫城と伏見はそれだけ交わすと
口を開きかけた十束の腕を掴み紫城は走り出した

「A!?」

驚きつつ
それでもバランスを整えた十束の声に紫城は振り返らず首を横に振る

「連携ならあの2人が1番だ。
足手まといになる前に脱出しよう。

鎌本とお前も来て」

焦りつつも、鎌本は紫城の指示に従い
少年と共に駆け出す

端末に目を落とした紫城が十束へ目配せすると、彼はコクリと頷いて鎌本に振り返った

「鎌本、その子連れて先に脱出してくれない？」

「はい!?」

「さっき言いかけた“御槌さん”って、このセンターの責任者だったりする？」

「そうだけど…」

何言ってるんだと言いたげな鎌本を放って
十束の問いに少年は訝しげに頷く

それなら、と紫城も迷う必要は無い

「向こうの出方を見たい。
逃げに徹したいけど多分それは無理そうだから、とりあえずそいつの所に行くよ。

俺が十束と行くから、鎌本はその子を安全な場所まで連れてって。
関係ない奴を巻き込めない」

「……わかった」

渋々了承した鎌本と別れ
紫城と十束は最上階まで向かう

端末へ視線を落とした紫城が
位置を確認しながら開いたマップをタップする

「ごめん、付き合わせて」

「別にいいよ。
1人では置いてけないし。

この先だ。
職員が集まる部屋がある」

戦闘員でない十束を
敵の、いわゆる親玉とタイマンで対面させるのは危険すぎる
それならば、紫城がついて行くのも当然だ

端末を仕舞った紫城は
先を行く十束の背中を眩しげに見つめ、僅かに目を細めた