【K】闇夜の中の少年【男主】 (ページ21)

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王のなりそこないページ21

酒を飲む周防
穂波達の食べたカレーの皿を洗う草薙

「草薙さん、キング、少しいい？」

2人に声をかけたのは十束だ
ちらりと紫城が視線を向けると、十束は安心させるように微笑みその髪を撫でつけた

十束は2人にアンナが“ストレイン”である可能性を指摘した

色覚異常でありながら、周防に興味を示したのは彼の色が見えたからではないか
そして床に転がしていたビー玉、あれはおそらく“見たり”“感じたり”するもの

いわゆる予知や千里眼と呼ばれる類の感応力

その根拠について、それらしいことを言われたのかと問われた十束はおどけて返すだけ
紫城に視線も向けられたが、彼も黙って視線を逸らした

アンナの通う病院は七釜戸の方面、黄金の王の膝元になる

草薙もストレインの施設については噂程度には聞いていた
力の制御を教えたり、犯罪に走らないように教育するのと同時に
その発生理由を探るために研究もしたりしているという話

草薙も十束もそれぞれ調べるということで
周防からもアンナの見張りの指示が出た

「…アンナは全部、知ってるんじゃないかな」

「え？」

「アンナのあの瞳のこと、気にしてるんでしょ？
諦めきってるけど
違和感があるって。多分、アンナは他のストレインとは違う」

それまでだんまりを決め込んでいた紫城は
突然、そう口にすると目を伏せる

「根拠はあるの？」

「…ないよ。
でも、俺の“勘”って外れたことないから」

少しだけ寂しそうに笑った紫城

ストレインとは、そもそも偶発的に、自発して能力を手にしたものを指す
人間以外にもその例は存在し

一説では、こう言われていた

「王の“なりそこない”か」

周防の鬱屈そうに呟かれた言葉に
紫城の拳が、きつく握りしめられた

白くなるほど握りこまれた拳に
十束がソファーに座る紫城の前に膝をついた

「ねぇ、A。
アンナちゃんのこと、気にかけてあげてくれる？」

「…せやな。
八田ちゃんと伏見に見張らせる予定や。
紫城は、トラブル起きへんように様子見といてくれへんか？」

「…伏見はやらないと思いますけどね、見張り」

ふは、と気の抜けたように息を吐き出して笑った紫城は
わかりましたと頷いた

一瞬前まであった影のある表情は一切のなりを潜めて