【K】闇夜の中の少年【男主】 (ページ20)

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差し出すのは赤色をページ20

「あの人といると、貴方は長く生きられない」

そう口にされた
貴方、というのは十束を指すのだろう、そちらへ視線が向けられた

十束はぱちりと瞬きをする
紫城は黙って、けれど僅かに表情を曇らせる

「……“見えたの”？」

十束の問いにアンナはふるりと首を振る

「何かがはっきり見えたわけじゃない。ただ…感じた」

「そっかぁ」

「怒らないの？」

「え、なんで？」

アンナの死の宣告に
気の抜けた声で返した十束に、アンナが不安そうに問えば十束は心底不思議そうに首を傾げた

普通、初対面で死の宣告をされれば誰だって怒るだろう
アンナはそれをわかっているのだ

「じゃあ、信じてないの？」

「ん？いや、そういうわけじゃないよ。
でもまあ、想定したことがなかった事態でもないから」

「そう…でも、貴方がいれば、その未来を変えられるかもしれない」

十束の言葉に不安に駆られた紫城だったが
アンナがそんな紫城に言葉を向けた

「俺？」

予想外の言葉に紫城は自身が引き止められた意味を理解した
頷いたアンナに、そっかと返した紫城はアンナに視線を合わせるようにしゃがみ込むとにこりと笑う

「そのドレス
お姉さんが選んでくれたの？」

「うん、ホナミが可愛いからって」

「うん、可愛い。
…これ、部屋にあったいちご飴。気が向いたら食べてよ。
綺麗な“赤色”でしょ？」

アンナの手に
赤い色をしたいちご味のアメを握らせた紫城

子供が苦手な訳では無いらしい

それを見ていた十束は
ふと首を傾げた

「(色覚異常の話が出た時、Aって2階にいたよね…？
それに、名前だって、聞いてたっけ？)」

「十束」

「え、何？」

「…なんでもない」

やはり違和感が生まれた
けれど、十束はその疑問はすぐに打ち消した

赤色が綺麗だと言ったのは
単にそういった言い方をしただけで、色覚異常のことは知らなくたってありえる発言だ

「アンナ、行くわよー」

くるりと身を翻し穂波と手を繋いで店を出るアンナ
その2人を先導する八田と鎌本

「アンナ、さっきのは他の人に言わないでね」

呟かれた紫城の声に
一瞬、アンナが視線を向けた