心は痛いと泣いていた ページ12
京都弁…京都弁？(似非)
▽
冷たく言い放つ紫城が
さらに言葉を続けようとした所を
横から草薙が手を伸ばし端末を奪い取った
「あ、草薙さ…」
「ええから」
何するんですか、と手を伸ばそうとした紫城を
十束が柔和な笑みで制す
「紫城…、Aのお母様で合うてます？」
《…誰かしら》
｢俺は、鎮目町にあるバーHOMRAのマスター、草薙出雲言います。
数日前からお宅の息子はんを預かってます｣
物腰低く、なるだけ丁寧に挨拶をした草薙に
紫城は面白くなさそうに唇を尖らせつつも、黙って成り行きを見守るつもりらしい
「ちゃんと連絡するよう言うといたんですけど、俺もちゃんと確認しいひんかったんで…
御迷惑と御心配おかけしたみたいで」
《…預かってるって、バーってことは貴方は成人してるのよね？》
｢そらもちろん｣
《それをそこに置くことに関して、貴方は問題ないと見ていいのかしら？》
ぴくりと紫城の眉が上がる
“それ”と称されたことが気に食わないのだろう
草薙が問題ないと伝えれば
彼女は深くため息をついて
《なら好きにしてちょうだい》
｢は…それは｣
《A聞こえてる？話は聞いた通りよ。
必要なものだけ持っていったら、鍵は机に置いておきなさい。
くれぐれも、迷惑はかけないでちょうだい》
あまりにもあっさりとした答えだった
初めの電話の内容でわかっていたが、どうやら紫城はあまり歓迎されて育ったわけではなさそうだ、と草薙も十束もわかっていた
それでも
その呆気なさには、少しとはいえ怒りも覚えるというものだ
しかし他所の家のことに深く入り込む必要は無い
ひとまず
紫城が吠舞羅、もとい草薙の元に身をおけるのならそれで構わない
「さっきも言ったけど
死んでも、アンタらには迷惑かけないから安心してよ」
《そう、ならいいわ》
ブチりと切られた通話から無機質な音だけが響き
草薙が紫城へ端末を返す
じっとそれを見つめていた紫城を
ふわりと
十束が抱きしめた
「大丈夫、大丈夫。なんとかなるって」
優しく
紡がれたその言葉に
抱きしめられたその温かさに
紫城の瞳から涙が零れ落ちた
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作者名：鍵宮 | 作成日時：2014年5月22日 15時
