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【男主】俺は知っている【uszw】2/2 ページ6

「…慣れてるな、お前」
『どうしたの?急に』


俺の問いに答えることなく質問を返す (人1)。


「お前、よく男と寝てんだろ」
『そういう牛沢は?』
「え?」


『牛沢はするの?』


男 と セ ッ ク ス。


耳に直接注ぎ込まれた生々しい言葉。
自分から仕掛けた癖に、普段のこいつのイメージから考えられないソレに反射的に警戒心が高まって思わず反論した。


「するわけないだろ、男となんて」


『へぇー』


あ。


『でも』


これはやばい。


『俺とはシてくれたんだ…?』
「……」
『ふふ、なんか嬉しいな』
「…………」
『ありがと』
「…っ」


捕まってしまった。


彼女ができたらいつか来ようと思っていた場所。
あんだけ知りたかった部屋の中は拍子抜けするくらいあっさりとしていた。
ベッドに置かれている2つの四角く包装されたそれだけが俺にとって非日常だ。
それも今となっては封を切られて雑に捨てられているけど。


『牛沢さ』


『俺のことよく見てるよね』


息が、詰まる。


しばらく何も答えない俺を (人1)はふっと笑う。
不思議とバカにされていると感じなかった。
そのまま重そうな布の擦れる音がして俺の肩まで布団が上げられる。


『もう少し寝ようよ』


子供にするかのようにポンポンと布団の上からリズムよく振動がくる。
いたずらがバレた子供のように横目でそっと (人1)を見る。
眉毛をハの字に下げてなんとも柔らかな表情で笑いながら俺を見つめていた。


あぁこれか、こいつに人が集まる理由。
目から俺に対する愛おしさすら感じられて、それに対して俺の答えを出す前に俺は眠りについた。


起きたら隣にいない (人1)、冷たいシーツ、息の詰まる部屋。
そしてテーブルの上に置かれている5千円札。


すとんっと腑に落ちた。
あぁやっぱりこっちか。
良かったじゃないか。知りたかったあいつの裏側。


でももう誰かにあいつの裏をバラそうとか思わなかった。
自分が男と寝たのを言いたくないとかそういうことより単純に自分がショックを受けているのがわかったから。


空っぽなのは部屋だけじゃない
頭の中も、俺の中も全部空っぽだ。


そこから俺はもう (人1)を追いかけ回すことはしなかった。
前と同じに戻っただけ。何も変わらない。


今日もあいつは誰かの中心になって騒がしい毎日を送っている。



俺は (人1)Aという男が嫌いだ。



嫌い「だった」こと。
俺は本当は知っていた。

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作者名:蟹汁 | 作成日時:2021年9月15日 1時

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