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76. ページ43

次の日、俺は数少ないオフを使ってポアロに出勤していた。

机を吹き、コーヒーを焙煎し、看板を出そうと外に出た。


すると、そこにはいっぱいの鳩がいた。



ぎょっとするが、目を凝らしてみてみればそれは鳩に囲まれた小さな女の子だった。

体をよじりながら擽ったそうに困った顔をしている。

「…どうかしたのかい?」



「今…あの子を呼んでるのー!」


女の子が大尉を指さしていた。

もう、じゃま!と身をふるわせると鳩はパラパラと色んな方向に飛んでいった。


そこには、茶髪のくせっげの女の子がいた。



なにか、なにかが胸に渦巻いた。

大尉が呼ばずとも呼ばずとも俺の足へすり寄った。


「わ〜すごい!動物に好かれるってきっとお兄ちゃん優しい人なんだね!」



『わ〜凄いですね…!きっとお兄さんが優しいからですね!』



誰だ、これは。




「お兄ちゃん、どうしたの?たいちょうわるい…?」



『透くん、どうかしました?』



なんで、なんで




「大丈夫…?」


うずくまってしまった俺に、女の子は優しく声を掛けてくれていた。


「…、ありがとう」

そんな言葉しかかけられないほど、俺の頭は1人の声で埋まっていた。



『透くん?』



『今日もよろしくお願いしますね!』



『わぁ〜コナンくんだ!』



『梓ちゃん、これって…』



『相変わらず透くんのお料理、美味しいですね〜…』



『なんで学園祭きちゃったんですか…』



『仕返しですっ』





『ねえ、透くん、大好きだよ』







『──────────バイバイ、レイ』




ああ、なんで、俺は




「…お兄ちゃん、泣いてるの?」



「…ごめんね、大丈夫だよ、僕は店の中で休むから」


そういい、頭を撫でると俺はポアロの中へ入った。




なんで、今まで忘れてたんだ。



ポアロに入ると記憶がもっと鮮明になった。



注文をとる姿、カウンターでお皿を洗う仕草、お会計をする時の笑顔、全部昨日のことのように思い出せた。




「…A、ちゃん」


今なら、分かる。
その名前が何を意味するのか。



「宗瀬間、Aちゃん」


ああ、虚無感の正体が分かった。





俺は、毎年愛する人を失っていたのか。







「…──────────好きだ。」




ポアロの中に、俺の掠れた声が響いた。

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今日の遭遇人物

赤井秀一


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茜子(プロフ) - 盛りそば。さん» うわあめっちゃ嬉しいです…!!これからもグッとくるように頑張ります!! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - toratora10さん» 紛らわしいことしてすみません…!!完結ではないです! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - ア"ッ何かすごく胸の奥に来る…(語彙力) これは良作ぅ… (2019年7月15日 11時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
toratora10(プロフ) - 完結ですか? (2019年7月11日 8時) (レス) id: 666f1a834c (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - ありすちゃん?さん» 私も何気そのシーン好きです笑読んでくださりありがとうございます! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茜子 | 作成日時:2018年4月1日 22時

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