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次の日、俺は数少ないオフを使ってポアロに出勤していた。
机を吹き、コーヒーを焙煎し、看板を出そうと外に出た。
すると、そこにはいっぱいの鳩がいた。
ぎょっとするが、目を凝らしてみてみればそれは鳩に囲まれた小さな女の子だった。
体をよじりながら擽ったそうに困った顔をしている。
「…どうかしたのかい?」
「今…あの子を呼んでるのー!」
女の子が大尉を指さしていた。
もう、じゃま!と身をふるわせると鳩はパラパラと色んな方向に飛んでいった。
そこには、茶髪のくせっげの女の子がいた。
なにか、なにかが胸に渦巻いた。
大尉が呼ばずとも呼ばずとも俺の足へすり寄った。
「わ〜すごい!動物に好かれるってきっとお兄ちゃん優しい人なんだね!」
『わ〜凄いですね…!きっとお兄さんが優しいからですね!』
誰だ、これは。
「お兄ちゃん、どうしたの?たいちょうわるい…?」
『透くん、どうかしました?』
なんで、なんで
「大丈夫…?」
うずくまってしまった俺に、女の子は優しく声を掛けてくれていた。
「…、ありがとう」
そんな言葉しかかけられないほど、俺の頭は1人の声で埋まっていた。
『透くん?』
『今日もよろしくお願いしますね!』
『わぁ〜コナンくんだ!』
『梓ちゃん、これって…』
『相変わらず透くんのお料理、美味しいですね〜…』
『なんで学園祭きちゃったんですか…』
『仕返しですっ』
『ねえ、透くん、大好きだよ』
『──────────バイバイ、レイ』
ああ、なんで、俺は
「…お兄ちゃん、泣いてるの?」
「…ごめんね、大丈夫だよ、僕は店の中で休むから」
そういい、頭を撫でると俺はポアロの中へ入った。
なんで、今まで忘れてたんだ。
ポアロに入ると記憶がもっと鮮明になった。
注文をとる姿、カウンターでお皿を洗う仕草、お会計をする時の笑顔、全部昨日のことのように思い出せた。
「…A、ちゃん」
今なら、分かる。
その名前が何を意味するのか。
「宗瀬間、Aちゃん」
ああ、虚無感の正体が分かった。
俺は、毎年愛する人を失っていたのか。
「…──────────好きだ。」
ポアロの中に、俺の掠れた声が響いた。
今日の遭遇人物
赤井秀一
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茜子(プロフ) - 盛りそば。さん» うわあめっちゃ嬉しいです…!!これからもグッとくるように頑張ります!! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - toratora10さん» 紛らわしいことしてすみません…!!完結ではないです! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - ア"ッ何かすごく胸の奥に来る…(語彙力) これは良作ぅ… (2019年7月15日 11時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
toratora10(プロフ) - 完結ですか? (2019年7月11日 8時) (レス) id: 666f1a834c (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - ありすちゃん?さん» 私も何気そのシーン好きです笑読んでくださりありがとうございます! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜子 | 作成日時:2018年4月1日 22時