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「その後、ソーニャは俺たちに銃を向けると、1歩ずつ、後ろに下がって言った。『こないで』って。なんでそんなことするんだって言ったら、ソーニャはただ、いつも通り笑った。そして、自分の足に銃を打った。思わず駆け寄ろうとした。なのに、ソーニャは、冷たい顔をして来ないでって、また言ったんだ。その後、右足、左腕、腹というふうに打った。
信じられなかった。
普通の女の子だ。慣れたように自分の体に打っていく。やめてくれ、辞めてくれって駆け寄った。なんでそんなことするんだって、そしたら…『だって、弾があったらヒロが死んじゃう』って流暢に話すんだ。
血はありえないほど出ていた。なのに彼女は、何も動じていない。彼女の目には諦観しか見えなかった。
『ヒロが死んだらレイが悲しんじゃうよ』って言うんだ。狂ってる、狂いすぎてた。
彼女は、赤井の方を見て言った。
『弾、5発でよかった』
って、笑ったんだ。赤井は心底信じられないという顔で見ていた。そして、彼女は俺を見ていつもと同じくふにゃり、と笑った。
『大丈夫、悲しくないよ、ヒロ、またね』
血だらけの手で、俺の涙をぬぐって彼女は最後、頭に打った。
…そこには、何もなかった。
あるのは、空になった拳銃だけ。
血の跡も何も無い。もう訳が分からなかった。
外から登ってくる足音が聞こえた。
ああ、終わった。そう思った。
何をする気力も起きなかった。
そこに来たのは、ゼロだった。
ゼロは、驚いた様子でこちらに来た。
俺は、ソーニャが死んだことを伝えた。そしたらお前、誰だそれって言ったんだ。」
ボロボロになった顔でヒロは言う。
確かに、あの日から数日ヒロの様子はおかしかった。
混乱しているのだろう、と思っていたがそれとは別の事情があったのか。
「携帯を見ても連絡先はなし、ソーニャの写真は真っ白になっていて3人で撮った写真も不自然に空白があった。
ああ、世界からソーニャは消えたんだ、と思った。」
これが、俺の知っていることの全容だ、とヒロは言った。
信じられない話だった。
だが、何故だか身に覚えのある話だった。
「…そこまで聞いても、俺は思い出せない。」
「…いいんだ、もう」
ヒロは、スッキリしたように笑った。
それとは裏腹に、俺には何かがずっとつっかかっていた。
今日の遭遇人物
赤井秀一
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茜子(プロフ) - 盛りそば。さん» うわあめっちゃ嬉しいです…!!これからもグッとくるように頑張ります!! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - toratora10さん» 紛らわしいことしてすみません…!!完結ではないです! (2019年8月7日 17時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - ア"ッ何かすごく胸の奥に来る…(語彙力) これは良作ぅ… (2019年7月15日 11時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
toratora10(プロフ) - 完結ですか? (2019年7月11日 8時) (レス) id: 666f1a834c (このIDを非表示/違反報告)
茜子(プロフ) - ありすちゃん?さん» 私も何気そのシーン好きです笑読んでくださりありがとうございます! (2019年6月1日 16時) (レス) id: 0ba88b4f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜子 | 作成日時:2018年4月1日 22時