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『え、でも好きな曲歌わせてくれるって』
「だってさ〜?Aちゃんがこんな曲作ると思わないじゃない、どんなに下手な曲作ってきたってプロに任せてちょいっとAちゃん作曲〜なんてことにしちゃえば済むと思ってたけどさ、これはね〜」
『…そうですか、すみませんでした!わがまま言っちゃって』
プロデューサーさんなら、甘えてもいいかなって思っちゃいました、なんて言えばプロデューサーは明らかにデレデレとして言った。
「俺も許してあげたい気持ちなんだけどね、Aちゃんにはかわいい恋のうたとかの方が売れるから!!」
『…恋、ですか?』
「甘酸っぱい恋の歌!Aちゃんの初恋は?付き合った人とかいるの〜??」
『すみません、まだ恋愛経験がないもので』
「うひょお〜いいね!!純情〜こりゃ売れるよ!!」
プロデューサーさんの口癖は、ことある事に売れる、としか言わないことだった。
売れる、売れない、でしか人を判断しない。
いや、それでしか判断できないのだ。
なにかが、心に渦巻いていた。
『ありがとうございます!』
ニコッと笑って早々に部屋を出る。
部屋を出た瞬間、言い様もない吐き気に襲われた。
口を抑え、屈む。
『うぇっ…』
すんでの所で抑えてトイレに駆け込む。
なにも入ってない胃からは胃液しか出ない。
喉がやけるように痛い。
こんな気持ちは、初めてだった。
初めて人の悪意に当てられた瞬間だった。
思えば、この日を境に狂ってしまったのかもしれない。
お笑い芸人のしょうもないネタで笑いが止まらなくなったり。
妙に、死んだ動物に感情輸入して泣き止まなくなってしまったり。
人からの嫌悪に勘づいて、怒ったりしてしまったり。
とにかく、××Aという人格の感情の起伏がタガをはずれたように溢れだしてしまっていた。
これを、どうにかするにはふたつにひとつだった。
感情を、“××Aとしての感情”を、殺すしか術はなかったのだ。
そして、私は施設長から貰った“宗瀬間A”という名前で改めてスタートすることを決意した。
宗瀬間Aは感情の起伏がもともと静かではない人格だった。
笑ったり、怒ったり、泣いたり。
喜怒哀楽がわかりやすい人間だった。
その方が、やりやすかった。
後になってセーブするのは難しいから、そうなったのだ。
今日の遭遇人物
鈴木園子
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ランデブー - 面白い展開になってきていつもニヤニヤしながら読んでますwww完結が気になりますが、無理せず更新頑張ってください! (2019年8月8日 13時) (レス) id: bbafcd59f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜子 | 作成日時:2019年8月7日 22時