The Shade Japan ～我らの挑戦～ sixth【イナオリ】【シェイドジャパン】 (ページ47)

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籠の中にいた鳥、その原点(人形草子鳴) ページ47

人形草子鳴 side

今は妖怪であるが、わっちも昔は人間であった。まぁ、自由にはほど遠い人生だったけれども……。

昔の記憶に意識を飛ばす。わっちは遊郭の中でも最上位の太夫であった。

周りの人間なんて信じられなくて、毎日毎日ひとりで泣いていた。早くこの郭の中から抜け出したいと。

『＿＿太夫、僕といっしょにここを出よう』

そんなとき、あの人に出会った。わっちを身請けし、自由にしてくれた。彼は蘭学を研究していると言っていた。

『まぁ！すごいでありんす！』

彼はわっちの里言葉を嫌がらなかった。郭を出ても、そのままでいいと言ってくれた。

『僕なんて、まだまださ。僕より凄い人はいっぱいいるんだよ』

『そんなことないでありんす！！＿＿殿は凄いでありんす！！』

もう名前なんて忘れてしまった。でもまだ貴方の声は覚えている。

優しく髪をすいてくれたあの手も、愛してると言ってくれたときの吐息も、甘い接吻をしてくれた唇も。

全て覚えているのに＿＿。

『＿＿殿は蘭学の中でも、何を学んでいるでありんすか？』

こんなこと、聞かなければよかった。

『ん……知りたいの？』

聞かなければ、

『知りたいでありんす！！』

『そっか』

ずっと、貴方といっしょにいられたのに。

『＿＿人間をアヤカシにする方法だよ』

そう言って、彼はわっちを押し倒した。ゴンッ、と鈍い音がして視界が眩む。頭を打ったのだ。

『っ、嫌！！助けて！！誰か！！』

精一杯大声を出し、助けを求めた。

『大丈夫だよ、痛くない“ハズ”だから。

君の美貌を残すためなんだ、

君のためなんだよ……？』

そしてわっちは、

そのまま意識を手放した。