夕飯 ページ8
テーブルにズラリと並ぶ豪華な夕飯。社長ともちさんが顔を見合せて「作りすぎましたね」と苦笑いする。いつもは見ないラインナップにAちゃんが不思議そうに声をあげた。
『今日誰か誕生日だっけ?』
「いッ…や、違います…ね」
『普通に豪華な日?』
「そうそう、普通に豪華な日です…」
しどろもどろにもちさんが答える。分かりやすい動揺の表れにこっちまで冷汗が止まらない。そもそもいつも仕事で居ない皆が一斉に晩御飯という事すら異例の事態なのに、こんなのおかしい事この上ない。俺だったら最後の晩餐を疑うな。
頂きます、とカトラリーを持ち上げるAちゃん。綺麗な所作で食べ物を口へ持っていく彼女を全員が食い入るように見つめる。俺達は目線だけで探り合いお互いの出方を待っていた。
『…食べずらいんだけど』
彼女がスプーンを置いて小さく高い金属音が鳴る。そりゃそうだ。男達が雁首揃えて食事の様を睨みつけてくるのだから。俺達のお姫様が不服そうに唇を尖らせたのに慌てて口を開く。
「や!可愛くってつい見ちゃうんよ」
『食べるとこなんて何回も見てるでしょ』
俺達の様子で流石に何かを感じ取ったのか、Aちゃんが椅子を引いた。
アカン。このまま聞けなかったら
また引き延ばす事になる。
焦って引き留めようとしたそれを遮って、誰かが言葉を発した。
「Aさん。
少しお聞きしたい事があるんですが」
『だと思った…』
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作者名:かんか | 作成日時:2023年12月11日 16時