ちょっと ページ4
この一連の騒動を考察した彼らの中で「Aさんの元彼なのでは」と言う話になり、今に至るようだ。まるで都市伝説の噂話を囁くように神妙な表情の面々。その気持ちは分からなくもなかった。
「どうする?」
「どうするって…」
どうするもこうするもない。本人から事情を聞き直ちに男を抹殺するだけだ。取り逃した事に変わりはないのだし、男が彼女の何であれ消えて頂かなくてはいけない。それは皆さん理解している筈だ。
だから、私には彼等の真意が分かる。
恐らくこれは
どうする?ではなく
誰が行く?でしょう
ここに居るのは剣持さん、葛葉さん、叶さん、夢追さん。直近で帰ってくるのは緑仙さん、不破さん、伏見さんの3人だ。
聞き出すのには全員それぞれ良い所があり、
そして全員それぞれ失敗しそうな要素がある。
誰かに絞るのは難しい。
考えあぐねる私に視線が集まる。ジリジリと詰められる距離に漸く求められている事が分かった。
あ、これ私がいくパターンだ
眉間を寄せて眼光を鋭くして見せても彼らの態度は変わらない。行くしかないのかと溜息をついて腹を括った所で、リビングの扉が徐に開いた。
『…ちょっと行ってくる』
無愛想な声音で言葉を残しAさんが出て行く。今まで彼女が外へ行く時言っていた「ちょっと」で、本当に「ちょっと」だったのは片手で数える程度だったと思う。
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作者名:かんか | 作成日時:2023年12月11日 16時