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マイペース ページ11

「おはよ」

ニンマリと笑う綺麗な顔。ここは私の部屋で私のベッドの筈なのに、緑仙は悪びれる様子もなく目を細めた。
…あれ  私、昨日鍵かけたよな

「すごいよね。これだけで開けれんの」

摘んだ針金をクルクルと回す緑野郎。
この酷い思考回路を理解しなければならないなんて、寝起きの身体では厳しい。と言うか理解したくもない。
まだ寝てようよと引っ付く緑仙を無理やり引き剥がして立ち上がった。朝日はもうとっくに昇っていて、眩しい光がオレンジ色に部屋を照らしている。

「目腫れてるけど。やっぱ泣いたんだ」
『もういいでしょ』
「良くなーい!せっかく慰めに来たのに」
『間に合ってる』

抗議の声に背中を向ける。騒ぐ彼を無視してドアノブに手をかけたところで後ろから別の手が重なった。意外と背が高い緑仙の口元が耳の近くにきて身体が固まる。

「本当に行くの?」
『…近い』
「嫌じゃないでしょ」

スルリと滑る指が私の形を確かめるように動いた。つぅ、と甲をなぞられて背筋が伸びる。唇が僅かに開く音がした。短く吐いた息に思わず目を閉じたけれど、次の瞬間緑仙はかなり強い力でデコピンしてきた。

『痛ッた!?』
「冗談。顔洗った方がいいよ〜」

愉快そうに笑いながら去っていく緑仙。ヒラヒラと振る手に思い切り舌を出してやった。どこまでもマイペースなアイツに絡まれるのが、よりにもよって今日なんてツイてない。
鏡の中のパンパンに浮腫んだ顔が困ったように項垂れた。

朝→←向いてない



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作者名:かんか | 作成日時:2023年12月11日 16時

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