殺し屋彼女は振り向かない【2j3j】 (ページ1)

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任務失敗ページ1

それは突然現れた。

仕事はいつも通り順調で、
同行している仲間の調子も良くて
今日は早く帰れそうだなんて思っていた。

抹殺対象一派の残党を一匹残らず排除していく。湿気の強い地下駐車場で男達の情けない悲鳴がこだました。初めは果敢だった奴らも犬に追い込まれた羊の様に逃げ惑っている。
相棒に付いた脂を服で拭い取り最後の仕上げと構え直す。
大方片付いたそこで
暇そうに頬を掻く葛葉を睨んだ
その時だった。

｢A？｣

やけに落ち着いた奴がいたもんだ、と思っていた。そいつはさり気なく、でも軽やかに攻撃をかわしていたから。逃げ惑って泣き叫ぶ奴らを他所に冷静な様子だったから。
厄介だから最後に殺そうと思っていた。
それがまずかった。

｢やっぱり。Aだ｣

男が会いたかったよと腕を拡げる。背筋を駆け巡る悪寒に突き動かされ、私は後ろへ跳び下がった。男は私が攻撃できない事を悟ったのかケラケラと笑いながら窓枠に手をかけた。焦る葛葉が私を呼ぶ。
逃げられる。殺さなきゃ。
早鐘を打つ心臓が頭の中にあるみたいに煩い。さっきまで自在に動いた身体は、まるでもう私のものではないみたいだ。

｢残念だけど帰らなきゃ。またね｣

粘質の高い猫撫で声で男が消えた。笑う膝に耐え兼ねて膝を着く。乾いた金属音がエコーし自分がナイフを落とした事に気づいた。
まともに力が入らない手足が震えるのを知られたくなくて、駆け寄った仲間達に｢何でもない｣とだけ告げた。