ドーナツ ページ25
お昼過ぎまで寝ていた私はひどい空腹感で目を覚ました。外は分厚い雲が太陽を覆っていて、日が射さないためか時間感覚が曖昧になる。
フラフラとキッチンへ行き冷蔵庫を漁った。
入っているドーナツの箱とパックの牛乳を抱えて振り向く。
「……あ」
『え…』
青みがかった黒髪に、
ピーコックグリーンのメッシュ。
全体的にダボダボの服を着た男がポカンと口を開けて此方を見ていた。
『…えと、初めまして』
「どーも、初めまして」
覇気のない見た目からは想像できなかった低い声にやや面食らう。
『円山Aです』
「黛灰。手に持ってるそれ、ドーナツ?」
眠そうな目が私の抱える箱を見つめていた。
『あ、はい。食べますか?』
「中、見して」
黛はのそのそと近づいて箱の中身を見る。無言で物色する姿は猫の様だ。
「…好きなのある?」
『好きなの…強いて言うならこれかな』
「あ…」
私が指さしたのはゴールデンチョコレートのドーナツ。ガリガリした食感のトッピングと生地のコントラストが美味しくて好きなのだが。
『あの…絶対それ好きですよね』
ピクリと眉を動かす男。表情が殆ど無いが、露骨にテンションが下がったのだけは分かった。
『どうぞ食べて下さい。』
「いいの?」
『私何でもいいので。黛さんはそれだけでいいんですか?』
ドーナツを皿に移して渡してやると、黛は心做しか満足そうに頷いた。
「…ん。ありがとうございました」
深々とお辞儀をして去っていく黛。モサモサとしたスリッパの音が聞こえなくなっていく。
彼独特の掴み所の無さは、不破のそれとはまた違う感じがした。
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つきか(プロフ) - 完結おめでとうございます!殺し屋パロ大好きなので見つけた時はとっても嬉しくてすぐに読んでしまいました。この後の彼らのこともすごく気になるので気が向いたら書いたりしていただけるとオタクが喜びます( ᐡᴗ ̫ ᴗᐡ) (8月22日 4時) (レス) @page50 id: 8bef64967f (このIDを非表示/違反報告)
かんか(プロフ) - 赤路爾栩/akarosikuさん» 自分が読みたかったものを書いたので沢山の方に読んで頂けてとても驚いています。ありがとうございました。 (8月21日 20時) (レス) id: 1012dc941c (このIDを非表示/違反報告)
かんか(プロフ) - 鈴乃さん» 私も好きな作品となったのでそう言って頂けて嬉しいです。ありがとうございました。 (8月21日 20時) (レス) id: 1012dc941c (このIDを非表示/違反報告)
かんか(プロフ) - みよーんさん» 思いつきで書き出して自信がありませんでしたが、みよーん様のコメントが大変励みになりました。ありがとうございました。 (8月21日 20時) (レス) id: 1012dc941c (このIDを非表示/違反報告)
赤路爾栩/akarosiku(プロフ) - コメント失礼します!完結おめでとうございます!毎日更新お疲れ様です!自分がこういう感じのパロが好きなのでニッコニコの笑顔で見てました(笑)応援してます! (8月21日 16時) (レス) @page50 id: 19b13f7579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんか | 作成日時:2023年8月17日 11時