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あの後、降谷さんは冷蔵庫から私のために作ってくれていたオムライスを取り出して食卓に置くと、キッチンに立って同じものを作り始めた。
私は降谷さんがケチャップライスを卵で包み始めた辺りから、自分用に電子レンジでオムライスを温める。
こんなにも美味しそうなのに、食べなかった自分が恨めしい。
「A、出来ましたよ」
『あ、すみません、まだ温めてて……』
「ああ、それは僕が食べますから大丈夫です。Aはこっちを食べてください」
『え』
「さぁ、どうぞ」
にっこりと笑った降谷さんに席に着くよう促されて、反抗もせずに素直に座れば、彼は温め途中のオムライスをレンジから取り出して自分の前に置いた。
完全に温めきれていないが、湯気がたっているため温度的には問題が無さそうなオムライスではあるけれど……。
『(……普通、降谷さんが食べるのはこっちじゃない?)』
目の前に佇む出来たてオムライスを見下ろす。
何故、せっかく作って貰っていたにも関わらず食べてない私がこちらを食べれるんだろう。
間違いなく、私が食べるべきは向こうだよね。
いただきます、と手を合わせてスプーンを持つ降谷さんに『あの』と言って手を止めさせると、降谷さんは「どうしました?」と不思議そうに聞いてきた。
『私、そっち食べます。元々私の昼食だったし、食べるべきはそっちです』
「ですが、今からは僕の夕食ですよ。……もし、昼食の事を申し訳なく思うなら、僕が作ったそれを美味しそうに食べてください。」
『お、美味しそうに……?』
「はい、美味しそうに。
………それだけで僕は十分ですから」
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作者名:-naki- | 作成日時:2018年5月10日 15時