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『聞いても、引きませんか』


「勿論。約束します」


『……その、実は』



私は会って間もない人に、今までのすべてを話した。と言っても、私が安室さんから聞いた"この世界"に来てからの話だが。

施設に居て、引き取られて。
ずっと孤独だった"私"こと。

沖矢さんは笑いもせず引きもせず、なに言わないで最後まで黙って聞いてくれた。



「君は、強いな」



その言葉に顔を上げれば、瞳の見えない糸目が私だけを見ていて。声には優しさが籠っている。

沖矢さんは両手で持っていた袋を片手に集めると、空いた方で私の頭に手を置いた。
そしてゆっくり、撫で始める。



「ずっと不安だったでしょう。助けてとも言えずに、独り暗闇の中。
……表に現れてるこの傷よりも、君の心はずっと痛かったはずだ」


『……』


「でも君は耐え抜いて、今ここで生きている。助けてくれた人のお陰と言うのもあるが、君は自分の意思で生きているんだろう?」


『………はい』



言葉のひとつひとつが、とても温かい。
頭を撫でてくれる大きい手が、柔らかく感じる。


この世界で生きたいのは本当。
けど、それで良いのかわからない。

誰かが代わりに幸せになるはずだった今を、結構楽しい生活を送れていた私なんかが奪って、よかったんだろうか。



「僕の目に映る君は君しか居ない。
少なくとも、僕は君に生きていてほしい

__それでも君が自分に生きる資格がないと言うのなら、作ればいい。何年かかってもいいから探すんだ。
そうしている内に資格とかそんなもの、考えなくなりますよ」



敬語だったり敬語じゃなかったりする彼の言葉は、真っ直ぐで純粋に私を思って言ってくれているとすぐに理解した。

それと同時に、涙が溢れそうになる。



__…私、生きてていいんだなぁ

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作者名:-naki- | 作成日時:2018年5月10日 15時

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