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早速というもの、そこからは3人体制でホールとキッチンを回したのだが、初めての組合せとは思えないほどスムーズに進んだ。
そしてその日の終わり。
「はい、鮭のムニエル」
『わ、…ありがとうございます』
コトン、と目の前に置かれた降谷さん特製のお料理は見た目からして美味しそう。私は帰りに本屋で買ってもらった勉強の類いを一度片付け、手を洗って再び席についた。
もはやプロの域だとも言える彼の料理。お店を出したらその顔立ちとこの味で追お儲かりするはずだ。
私は手を合わせてから鮭のムニエルをひとくち。
『……おいしい』
思わず呟いた私を見て降谷さんは優しく笑った。
「ちゃんと噛んで食べてくださいね」
『はい』
出会ってから1週間、降谷さんの保護者が板についてきたと思う。この世界に私の親は居ないし、当たり前だけど友達も居ない。
寂しい、とは思う。
でも、何の縁もない私を引き取って、今もこんな風に食事を与えてくれる降谷さんは、そんな寂しさも紛らわせてくれる。
……元の世界には戻れないけど、幸せだ。
『…ふるや、さん』
「どうしました?」
『私、貴方と出会えて良かったです。
_…本当にありがとうございます』
箸とお茶碗を持ちながらで悪いとは思うけど、言うだけ言わせてほしかった。どうしても、伝えたかった。
降谷さんは暫し目を見開くと、向い合わせの位置から私の頭を撫でる。
「…どういたしまして、A」
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作者名:-naki- | 作成日時:2018年5月10日 15時