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ページ33

ひっ、と息を引き攣らせて肩を跳ねさせる。

フィリックスの、雪原のように白く短い人中の上を、墨汁のように真っ黒な血が滴り落ちていった。リクスは虚ろな目のまま数秒虚を見つめたかと思うと、そのままふらっと上体を投げ出して床に倒れた。彼の耳から垂れたらしい黒い血の染みが床に僅かに広がっていき、真っ白な床の上を幾らかの黒斑が汚した。


「い、……いやぁーッ!!」


私は絶叫した。悪夢実験を受け、椅子に繋がれていた時ともまた違う、助けを乞うような叫びだった。リクスに覆い被さってその肩を抱きながら泣き喚く。神さまが造り出したもののように精巧で、生気のない人形のような顔を晒して眠るリクスを揺さぶって、叫んだ。


「誰か、誰か来てぇえ!フィリックスが……フィリックスが倒れた!誰か助けて!助けてお願い!」


どの程度そうしていただろうか、壊れた筈の扉にあみだ状の緑の閃光が走り、それがシュッと自動で開扉すると、うっすらと口元に笑みを浮かべたヒョンジンがゆったりと入ってきた。目にかかった赤髪を長い指先で避け、私たちの様子を見ると「あーらら」と更に愉しそうに笑みを深めた。


「どーしたのぉコレ、何事?」

「ぅ、分から、な……急に、倒れちゃったの……お願い、助け、て」

「んー……」


ヒョンジンは長い足を折ってしゃがみ込むと、フィリックスの輪郭を捕まえて持ち上げ、何が可笑しいのか相変わらず飄々と笑いながら彼の瞼を押し上げて瞳を見たり、首元の脈を押さえるなどして数箇所の確認を行った。


「んーなんだろうね?変なとこから出血してるなぁ……」

「助かる、よね?ただ気を失ってるだけよね……」

「だいじょーぶだいじょーぶ。こんなぐらいでこっちの連中は死なないよぉ」


空いた方の手で私の頭を軽くポンポンと撫で付けたヒョンジンが、そのままフィリックスの体をひょいと肩に背負って立ち上がった。


「とりあえずハニ辺りに見せるねー。多分なんとかしてくれるし」

「は……う、うん」

「Aチャンは寝てなー、疲れたでしょ?また実験もあるし、休みなよ」


そう声をかけて部屋を出ようするヒョンジンを見て慌てて立ち上がり、その後をついて行く。


「嫌、ついてく……散々寝たし、もう、寝たくない」

「んー?休まなくていーの?」

「……いい」


フィリックスの容態が気がかりだから、とは言わなかったが、全て見透かしたような翡翠の双眸でこちらを見下ろしたヒョンジンは、ふっと口元を緩めてうっそり笑った。


「ヨンボクのこと、だぁーいすきなんだねぇ。Aちゃん……」

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K(プロフ) - こちらも失礼します!こちらのお話も大好きでスンミンのお話共々こちらも楽しみにしています🥲 (4月30日 1時) (レス) id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - 面白くて大好きです!!続きが楽しみすぎる💝💝 (4月5日 16時) (レス) id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)
yu0915a3(プロフ) - 面白すぎて一気見しちゃいました!更新楽しみにしてます! (3月20日 15時) (レス) id: 007a6e765c (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 更新楽しみにしてます‼︎ 頑張ってください🫶応援してま〜す☺️ (10月29日 8時) (レス) @page11 id: 18cece54db (このIDを非表示/違反報告)
toramaru08(プロフ) - こんなにも続きが気になる作品は初めて見ました!!更新楽しみにしています! (10月28日 10時) (レス) @page11 id: aaf46efba9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ジャコ | 作成日時:2023年9月23日 22時

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