人生とは甘美である。4 Jun.M (ページ8)

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オフィスに戻ると清水部長から正式に報告されると飯島さん含め、プロジェクトチームの人たち、同僚の皆さんが祝福してくれた。

初めての社員。

そしてこんなサプライズ。

嬉しくて益々仕事を頑張りたい、まずはこのプロジェクトを成功させたい、そう強く思わせてくれた。

胸の中がまたじんわりと満たされていく。

潤がくれたサプライズが嬉しくてたまらない。

思えば、お母様と馮さんの誕生日プレゼントを買いに行き、潤が香水をプレゼントしてくれた時。

「プレゼント」
「あんな高いもの貰う理由ない」
「…なら就職祝い？」
「就職って…私ただの派遣社員だし」
「ちげぇから」

確か、そう言ってた。

あの時にはもう決めていたのかもしれない。

派遣や契約から社員になることは契約時の文面で記載されていることもあるけれど、実際いくら頑張ってもそこにたどり着く壁は分厚いことを幾度となく経験してきた。

そして私にとって自分を諦めていた一つのモノだった。

きっと彼はそれを知っていた、気づいていた。

そう思ったら、潤に会いたくて会いたくて仕方がなくなった。

あの場で、あのパープルを身に纏った潤の視線が頭から離れなくて。

体が火照り、奥底で疼くなにかがあった。

何時ごろに帰るのかメールで聞くと、
「21時ごろには帰る」と返事が来たので、私も20時過ぎには仕事を切りあげ足早に家に帰った。

成美さんがちょうど帰る頃だったらしく、週末に欲しい食材だけお願いして私は少し急いで昼から計画していた準備に取り掛かる。

軽くシャワーを浴びて、
百貨店で買ってきた新しい黒い下着を身につけ、
潤がプレゼントしてくれた危険な名前の赤い瓶の香水を纏おうとして、
ふと、潤が普段から身につけている茶色い方の瓶の香水が目に入った。

あの時店で嗅いだムエットの香り。
2人の初めての夜の香りを思わせるその2つを混ぜて体に香りを纏う。

あぁ、早く潤に触れたくて、触れて欲しくて
また…ため息と共に奥歯がカタカタと小さな音を立てた。