人生とは甘美である。4 Jun.M (ページ38)

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聞きたくない、と思った。
耳を塞ぎたかったし自分の恋人の過去のそういう類になんて触れたくない。
だけどこれを聞かないと私達は前に進めない。

「俺の最初を奪った」

「それって…」

「ああ…犯罪だとも言える。
でも俺は怖くもあったけどそこに伴う快楽を味わってしまったんだ…
後でわかったけど紫さんはその時にはすでに旦那さんとの子供がお腹にいたらしい。
その後も彼女が家庭教師の日には勉強の後に彼女は俺と…。
申し訳ないと思ったのか彼女は毎回俺に金を渡してきた。
なんとなく…断れなかった。彼女も彼女なりに申し訳なさそうな表情を浮かべていて断れなかったんだ。
実際彼女の旦那さんはとてつもなく金を持っていて彼女も金を自由に使っていて。

そこからかな…学校に通い出すようになった。
フラストレーションの吐け口を手に入れたことで親父たちに対しても普通の親子みたいに接することができるようになって。
…めちゃくちゃ喜んでくれたんだ。
嬉しそうに毎晩ご馳走なんて作っちゃって。

…だけどどこかで自分じゃないような、いつも俺は何かが欠けたように感じてたのも見て見ぬフリした。
ただ快楽を求めてただけだった。
そこになんの感情も存在しなくて。

俺は正直どこの馬の骨かも分かんねぇ女を抱きながら窓に映った自分が目に入った。
その時、俺何してるんだろう。これじゃあアイツらと…
俺を苦しめた義母とあの男と何にも変わらないんじゃないかって思って飛び出した。
その後から受験を理由に塾に通うって言って彼女とは会わないようにした。

当時はわからなかったけど、俺はあの女にされたことが犯罪だったってようやく気づいたんだ。
快楽に身を任せて体は気持ちよくなってたけど実際心は虚しくて。
その事実に気づいた時……自分が気持ち悪くかった。
汚い、…今でもそう思う事がある。
…だから純粋な気持ちで恋をする、愛し合うなんてできなかった。
…恋なんてしたことなかった
誰かを愛おしいあまり抱きたくなる気持ちも湧かなかった」