人生とは甘美である。4 Jun.M (ページ35)

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「今度はあなたなのね。おいくつ？」

なんのことか分からない。
今度は、その意味が。

「28歳です」

「あら、また随分年下になんかちょっかいかけちゃってあの子(苦笑)
…フフ、ごめんなさい。彼とはもう20年前から知り合いで…その…色々知ってるからつい。
彼は年上が好きだったからまさか年下の子なんて相手にするのが信じられなくて」

悪いとも思わないように笑いながら口にする。
本当に腹立たしいし、捉え所がなさすぎて気持ちが悪い。

「そうなんですね。
ゆっくりお話をお伺いしたいんですけど彼が待っているのでお先に失礼しますね」

そう言うと酷く嫌な顔をした。

「ええ、いつでもどうぞ。
連絡先は潤くんに聞いて？
知ってるはずだから」

私は彼女の横をすり抜けトイレを出ようとした。

「さっさと傷つかないうちに離れた方がいいわよ」と吐き捨てるように言われ思わず足が止まる。
相手になんかしたくもない。
今口を開けばみっともない事を言いそうな自分がいたからそのまま何も答えずカフェの外で待つ潤のところへ向かった。

「どうする？どっか寄る？」

「いい…帰ろ」

潤の腕を引っ張り家に向かうよう強い口調で告げた。
車中では一切口を聞かなかった。
その間私は私と対話していた。
何があっても目を背けない、受け入れる覚悟があるのかって。

家に帰り私はリビングに向かって腕を組みながら大股で歩き、そして深呼吸をした。
冷静になるために。
後ろにいる潤を見た。
戸惑っているようだった。

「…そろそろ教えてくれない？」

「何を？」

「あなたが口を閉ざしている過去について」

そう言うとまた目が動揺した。

「さっきトイレで紫さんに絡まれたの。
こんな年下の子にちょっかいかけてるなんて、って。
早く別れた方がいいとも言われた。
もしかして、私のことはちょっかい？
本命は紫さん？」

鎌をかけた。
潤が私を想ってくれているのは伝わっているし理解はしているつもり。
だけどこう切り出さないと本当のことを話してくれないかもしれないと思ったから。