人生とは甘美である。4 Jun.M (ページ16)

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寂しさを埋めるためママの所に行こうかと思ったけれど、潤がいない間にお店に行くのはなんだか気が引けた。
1人でもできる時間潰しの参考を調べようとネットで色々見ていたら「自分磨き」というワードが目に止まった。

ヘアチェンジか。
今までお金を貯めるために、借金を返すために、なるべく無駄な出費は避けてきた。
自分に関することは全部無駄な出費だと思っていたから。

これを機に染めてみようかなと思い色々検索するも自分がどれが似合うか分からない…。
お昼休みにコンビニの雑誌コーナーでファッション誌を見ても結局よく分からなくて。

自分に関心を持たないようにしていた分、今からそれをしたところで何もかもが分からなくて、ぼんやりと歩いていると、後ろから「園田さん…？」と声をかけられた。
振り向くと、潤の秘書の雪平さんがいた。
会釈を互いにすると彼女がこちらに小走りで向かってきた。

「おつかれ様です」

「おつかれ様です」

「ランチに行かれてたんですか？」

「いえ、ちょっとコンビニに…」

「そうなんですね。
あの、…社長から聞きました。
おめでとうございます、で合ってます？(笑)」

「…多分？ごめんなさい、よく分からないけど、でも合ってると思います(笑)」

「良かった(笑)
社長…もう少しで帰ってこられますね」

「はい」

私は彼女の美しく手入れされた髪に思わず見惚れた。

「…？どうされました？」

あの後突然の質問に彼女は自身の行きつけの美容院を紹介してくれ、今日の予約を取ってくれた。

仕事を終え、お金をおろすために銀行に向かって残高を確認すると給料日が過ぎていたことを思い出す。
アパートを退去したことで家賃を払うこともなかったから溜まったお金を…一気に下ろした。
これでようやく……。