人生とは甘美である。4 Jun.M (ページ15)

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1人寂しくあの家に帰る。

家に帰ると成美さんが居るけれど、キングサイズのあの大きなベッドで一人で寝るのは寂しくて。

潤からの電話を待ちながらスマホを握りしめてベッドに入った。
潤はそれを見越してなのか、向こうは朝の時間帯で忙しいはずなのに、私の帰ったころの時間に合わせて電話をかけてきてくれた。

「もしもし？起きてた？」

「うん、待ってた」

「だと思った(笑)」

「…」

電話越しの潤の声がいつもよりも甘く感じる。
その声が近くになくて寂しかったのに、たったこの数秒で身体中の疲れが解されていくのを感じた。

「なんかアレだな…あんまり電話することなかったから逆に新鮮だな」

「確かに。今まで電話ってちゃんとしたことないね…。
時間は大丈夫なの？」

「うん大丈夫。
今日は？何してた？」

「特に何にも。あっ、でもご飯一人で食べるのなんだからって成美さんが一緒食べてくれた」

「そっか。
もうちょっとだから我慢して？」

「うん…仕事忙しいでしょ？
休める時に休んでね」

「わかってる。
今日はもう寝ろ。な？」

「分かった…おやすみなさい」

「おやすみ」

電話を切ると大きな窓から東京を見下ろす景色が目に入った。
この夜景が私の心をさらに寂しくさせる。

こんなにも短い間で私は潤がいないことに耐えられなくなってしまったんだ、と。
潤の声を聞くだけでじんわりと涙が浮かんだ。
私……たぶん、もう…。

戻れないから怖くてその先の言葉を言うのが怖くて。
認識するのさえも怖くて。
まだこんなに臆病だったんだ……。
一度幸せを感じると、今度はそれが失われてしまわないか不安になる。怖くなる。
そしてもっと強い欲が出てきてしまう。
それを知りたくなかった。
だから今まで人肌を恋しいと思わないようにしてきた私は、すっかりとその欲に飲み込まれそうになる。