人生とは甘美である。3 Jun.M (ページ42)

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「凄い…」

「そう？」

「うん、本だらけ」

思わず笑みが漏れる。

「本、本当に好きなんだな」

「うん。図書館とか本屋さんとか本がたくさんある所見るだけでワクワクする。素敵だね」

「よく読む本は引っ越す時に今の家に持っていったけど、もし読みたいのあるなら、どれか持って帰る？」

そう言われて改めて各本のタイトルをきちんと読み直す。

そうしていると私の背後から温かい腕が私のお腹あたりに回ってきて同時にタバコとバニラの匂いが私を包む。

「なぁ、…大丈夫だった？」

「何が？」

「変なこと言われなかった？」

「お二人に？変なことってなんだろう？(笑)」

「ならいいや」

腕をそっと解いて潤の方に向き合う。

この美しい目を、この優しく、人を温かくさせることのできる目の前の彼を見上げた。

「……幼い頃の潤にもっと早く出逢いたかった」

「俺も。小さい時のAに早く出逢いたかったよ」

どこからともなく惹かれあい甘いキスを交わす。

潤が育ったこの部屋で私達の愛しい口付けの音だけが静かに鳴る。

おでことおでこをコツンと合わせ、二人してこの甘い空間に思い切り酔いしれた。

「そろそろ、帰ろうか？」

と潤が手を差し出したので、私はその手を握り、潤の育った部屋を後にした。