人生とは甘美である。3 Jun.M (ページ1)

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万願寺のハム巻き、白身魚のポワレ、じゃがいもとチキンのグリル、シラスのペペロンチーノが長方形のプレートに少しずつの量で盛られていた。

私の方は量が少なめに盛り付けされていたので、きっと事前に潤が成美さんに話しておいてくれたのだろう。

潤が「ちょっと待ってて」と言うので大人しく座って待っていると。

シルク生地にジャガード織りのネイビーの艶やかなショートガウンに着替えた潤が来て、棚からワイングラスを2つ出し、ワインクーラーに並べられているワインをじっくり吟味し、一本の赤ワインを持ってきた。

小さく音を立てたワインをグラスに注ぎ、私達は互いのグラスをカチンと合わせた。

とても芳醇なのに、後味がほんのフルーティなテイストのワインが舌を滑る。

そして、やはり、成美さんの作ってくれたどの料理とも絶妙にマッチする。

潤はワインも選ぶのに抜かりがない。

本当にどれもが美味しくて、1日の疲れが吹き飛ぶというのは、こういう事かと実感した。

少なめに用意してもらった分気楽に食べられる。

潤は「もっと食べろ、痩せすぎだ」と言うけど食べ残したほうが嫌な顔をするので、これで丁度いいと私は言い張った。

その週から新しい仕事内容に移った。
事前に派遣会社から説明は受けていたが、この部の本質。核。

本、雑誌を売り出すために、広めるために、どの手を使うか、またどの方を取るか、誰に読んでもらいたいのか、マーケティングだ。

いよいよ本格的に私の本来のやるべき仕事が待っていた。

昨日の夜潤にそのことを告げると、
「無理せずにな…ただ期待はしてる」
と、とびきり身も心も甘やかしてくれたおかげで、私は内側からエネルギーがみなぎってきた。