人生とは甘美である。Jun.M (ページ40)

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席に着くなりすぐに水と白ワインが運ばれてくる。

さらには前菜、赤身肉のステーキまでずらっとコース料理らしきものが順を追うのではなく、一気にテーブルの上に並んだのだ。

その景色圧倒されていると、

「君は水ね。」
と言い強勢的に水を渡された。

「どれでも好きな物からどうぞ」

「なんで食事なんですか？さっき家に送るって」

「何も食べていないのにそのまま帰す訳ないだろ。いいから食べろ。」

「食べろって…」

松本さんは私の手にある水が入ったグラスに自分のグラスを合わせ軽やかな音が鳴ると白ワインを口にした。

その白ワインを飲む松本さんが、
その大きく上下しながら動く喉仏が、
とても官能的で目が離せなくなった。

…昨日今日と感じていた恐怖の正体がようやく分かった。

夜景と店内の煌めく明かりに照らされた松本さんは、いつも以上に危険に見えた。

私は彼が怖いのではない。

自分が怖いのだ。

それは…

私が彼に、松本さんに、惹かれずにはいられないからだ。

私の視線に気づいた松本さんが、ワインを置き、大きなため息をついた。

「そんな目で俺を見て…俺がどれだけ苦しいか分かってるのか？」

言葉だけを取ると責めるように聞こえるが、その声色は…とてつもなく小さく、威厳をなくし、困惑しているようだった。

私は何も言えなくなり、松本さんをただ見るしか出来なかった。

…松本さんの目には影が宿るのが見えた。