人生とは甘美である。Jun.M (ページ34)

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その日はお店に出勤ではなかったから、ママにはもしかしたら辞めなければいけない可能性があるとだけ念のために先に連絡だけ入れておいた。

昨日に引き続き、ほとんど寝れないまま、翌朝を迎えてしまった。
　

どうしたって松本さんが頭から離れない。

あの触れられた部分を思い出すだけで身体が硬直したように…。

ただ理由もわからないままで。

食事もうまく喉を通らない。

カフェに行く気分にもならなかった。

夕方店に行けば、ママの顔を見たら安心して食欲も沸くかもしれない。

そう思って出勤しても、状態は何も変わらなかった。

眠れていなくたって、食べれていなくたって、店が開けばいつもの笑顔を、まるでテンプレートを引き出すかのように、私はお客さんに接していた。

自分を俯瞰的に見ているような、自分が自分じゃないような、そんな感覚が側にあった。

今日もそれなりに人は入ってきた。

見知った顔がいくつもあり挨拶を交わしながら、
お酒を作って話しては、別の卓へ向かい、また話を交わす。

私はお客さんとお酒を共にし話してもそれほど飲まないようにしている。

接客という大事な仕事のために。

だけど正直、昨日から何も食べていない状態で迎えるお酒はいつもの何倍も酔いが身体中に回り、気持ち悪さも伴ってきた。

少しカウンターの方で休もうかと思い、向かおうとした時。

店のスタッフに連れられて。

…私を離してくれない人が現れた。