人生とは甘美である。Jun.M (ページ24)

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これじゃああまりにも視界に入れる松本さんの方が不憫だ。

だからといって私が雪平さんのような格好をしたって似合わないのだけれど。

そうこう考えていると、電話が鳴った。

雪平さんがデスクから立ってこちらに向かってき、

「じゃあ行きましょうか？」

と声をかけたので、二人で奥の社長室へ向かう。

エレベーター降りてすぐに受付がありそれが秘書室代わりらしい。

長い廊下を隔てた一番奥に社長室があった。

思わず身が固まる。

「んふふ。そんな緊張なさらなくても大丈夫ですよ(笑)
確かに社長は人を見る目と仕事に関しては厳しいですが、お話すると見かけによらず優しいお方ですので。
頑張ってください。」

そう励ましを受けた。

雪平さんが社長室をカードキーでロックを解除し、ノックし、一言声をかけた。

そして……。

中から「入ってもらって」と声が聞こえた。

松本さんだ。

改めてそう認識した瞬間、前に踏み出す足がプルプルと震えた。

中に入ってすぐ松本さんの姿を確認する前に、
「失礼します、Aです」と頭を下げた。

「…中どうぞ。」

甘く痺れる声が聞こえた。

「……はい」

顔をそっと上げた。

松本さんがデスクから立ちがったのが前髪越しに見えた。

そして、バタンと大きな音を立ててドアが閉まる。

この部屋にいるのは私と、…松本さんだけだ。