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あのママでさえ普段の私を見ても気づかないのだから…
たった数十分居た私などに気づくわけあるはずもない。
それにあの時はほとんど話をしてない。
最初と最後の挨拶でしか言葉を発していない、だから私の声など…
メガネをかけ直し、前髪を上からぐっと抑え、目を覆うように隠した。
目に見える、覚えられるようなネイルなどしてなくてよかった。
17階に向かうと、初めて見る女性が受付に座っていた。
「あの、すみません。
今月入社しました園田と申します。
社長に挨拶に伺いました。」
「初めまして。私、秘書をしております雪平と申します。
少しお待ちくださいね。」
そう言い、綺麗なネイルが施された手で電話をかける。
「社長。入社された園田さんが挨拶に来られています。
…はい。かしこまりました。」
電話を切ると、
「ただ今ウェブ会議中ですので、少しだけ掛けてお待ちください。もう終わる頃ですので。」
と言われたので向かいの黒いレザーのソファに腰をかける。
どこを見て良いのか分からなくて、そっと雪平さんを盗み見した。
シンプルだけどラインがとても綺麗で細身なスーツ、綺麗なピンクのネイルに、焦げ茶色の髪を毛先だけ緩く巻いて、メイクも派手じゃなく控えめ。
率直に綺麗だ、と思った。
そりゃ松本さんに仕える秘書だもの。
あのぐらいレベル出ないと彼の横を歩くには務まらない。
そう思い、自分の服を見ると、滑稽で…惨めになった。
可愛くもない、ただ機能を重視した低いパンプス、膝下丈の茶色いロングスカートに、紺の首が詰まったトップス。
どうせ松本さんに会うならもう少しマシな格好をしてくればよかった。
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作者名：Clara
| 作者ホームページ：https://www.instagram.com/st.clara.6/?hl=ja
作成日時：2021年2月6日 16時
