人生とは甘美である。Jun.M (ページ19)

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JCホールディングス…社長…

そう聞こえ心臓が飛び跳ねた。

咄嗟に顔を下向け、店の地面を見ながら

　
「きょ、今日は来てくださりありがとうございます…」

蚊の鳴くような声で絞り出たその言葉は長年言い続けたテンプレートのセリフだった。

「あらー！！！めちゃくちゃ男前さんだわ！タイプ！(笑)」

ママは私の隣でそう言い、はしゃいでいる。

……そっと目を上げて彼を見た。

喉の奥がヒュウッと鳴った。

そこで目に入ってきたのは。

恐ろしいほど美しく、この世の人間ではないかのような美しい様だった。

その彼が。

松本さんが。

唇に緩やかな弧を描いて私をじっと見ていた。

綺麗なダークブラウンの髪型で前髪は上げて横に流していて、色は白く、切れ長の瞳で、高い鼻。

シャープな顎と顔立ちに、上質なスーツに身を包み、苦味と甘みの混ざった様なクセになる香りを感じた。

その瞬間…。

感じたこともないような温度が。

私の身体の内側から全身にかけて火照りだし、機能しなくなるような。

金縛りにあったようだった。

目が離せない。

彼も私もお互いを見つめていた。

そしてその濃いブラウンの瞳からは、
まるで全てを見透かされているような。
そんな気がした。