治くんの彼女。【HQ】 (ページ13)

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翌日。

部のカメラを首から提げたAが体育館を覗いた。

A(よし、みんな練習に集中してるから今のうちに...)

タイミングを見計らったAがこっそりと侵入する。

「コース意識しろよー！」

「うす！」

部員の声が体育館に響く中、Aが静かに北に挨拶した。

A「お疲れ様です。ちょっとだけお邪魔します」

北「はい、よろしく」

Aが北に小さく一礼し、部員の邪魔にならないようにカメラを覗く。

治(...早速来よったか)

Aに気付いた治が警戒し始める。

治「ナイッサーもう1本」

ここにおるぞ、と言わんばかりに治が声を出す。

治に気付いたAがバレないように微笑んだ。

写真を撮り始めて約30分程。

A(よし、これくらいでオッケーかな)

写真を撮り終えたAが帰ろうとした時。

「危ない！！」

A「え」

部員が打ったサーブがAに目掛けて飛んできた。

治「！」

治が咄嗟に走るが間に合わず、驚いて足が竦んだAが目をぎゅっと瞑った。

バシッと大きな音が聞こえたAが恐る恐る目を開くと、侑のたくましい背中が目に入る。

侑「Aちゃん大丈夫か？」

にこりと微笑んだ侑がゆっくり振り返った。

A「あ...はい。ありがとうございます...」

呆然と立つAがお礼を言うと、血相を変えた部員が侑に駆け寄った。

「侑先輩！すみません！！」

侑「しゃあないしゃあない」

てっきり怒鳴られると思った部員がにこりと笑う侑を見て拍子抜けした。

部員がボールを持って戻ろうとした時、侑が部員の肩に手を掛け力強く引き寄せた。

侑「...謝る相手俺だけとちゃうやろが」

ドスの効いた低い声、見開いた目に部員が一気に青ざめる。

「すっ！すみませんでした！！」

すごい勢いで頭を下げる部員にAが焦った。

A「いや、私もあんなとこおったんが悪いんですごめんなさい！」

部員が逃げるようにして戻った後、侑がにこりと微笑んだ。

侑「折角来てくれたのに怖い思いさして悪かったなあ」

A「い、いえ...」

侑がAにじりじり近付くと、駆け寄った治が無言で侑に肩パンした。

侑「痛っ！」

侑がイラッとしながら治を見ると、治が真顔で口を開いた。

治「帰ったらプリン1個やるわ」

侑「はぁ？肩パンしながら何言うとんねん！」

宮兄弟がやいやいと口論している隙にAが静かに体育館を後にした。