店員さんに大感謝したい #16 ページ17
彼がその手でとったのはこの間…私と謎の出会いをした日につけていたリップ。
淡いピンクに心做しの薄いラメの入った控えめなもの。
店員さんに半ば押し売りされたもの。
その時は押し売りされたものだったが今では結構お気に入りだったり…。
クルクルと蓋を回してパッとチップが抜かれればたちまち甘い匂いが広がる。
確か香りは桜だったか。
チップの先に付いた淡いピンクを優しく私の唇にのせた。
ちょんちょん、と言ったように唇に推しの握ったチップが当たってそれだけで、なにかイケナイことをしている気分にクラクラする。
「…よし!どうかな?」
ちゃっかりポーチから鏡を出していたのか鏡をこちらに向けてくる。
淡いピンクが唇に乗っていてやっぱり綺麗。
「いいかんじ…!」
「ただ塗っただけなんだけどね…気に入って貰えて良かった」
一瞬少し悲しそうな顔をしてまたいつもの笑顔に戻る。
「行こっか」
「うん!」
お母さんのいってらっしゃいの声が震えていたのは絶対叶くんのせいだと思うが…。
本人は楽しそうだし、お母さんを可愛いなんて言ってるから諦めておく。
日が出てきたせいか当たりは半分顔を出したお日様で照らされている。
今日は熱くなるな、とちょっぴり服装を後悔した。
電車を乗り継いでやっと会場に到着する。
ヘトヘトになりながら来たけど意外と近かったのか。
「僕の傍離れないでよ?」
サラッと釘を打たれて勢いで返事を返す。
「う、うん!」
涼しい風が体を包んで芯まで冷えていく。
外との気温の差に思わずブルりと身体が震える思いだった。
「ライブ終わるまで貸してあげる」
パサりと肩に掛けられた薄いカーディガンは甘い匂いを放っている。
香水の匂いなのか彼を表したような香り。
「あ、ありがと…」
「どういたしまして」
嬉しそうに笑った彼につられて微笑みながら後目にキョロキョロと当たりを見回す。
いつも待ち合わせしてる、と配信で聞いたことがあるんだけど…今回はないみたい。
「葛葉おはよ」
「おーかなえ…とAさん!?」
さぞ驚いたというように目を大きく見開いて居る吸血鬼さん。
配信でよく見るダジャレの後のような顔でますます面白い。
「おはようございます…」
笑いを噛み締めながら何とか挨拶をする。
「えと…おはようございます…?」
頭にハテナを浮かべたまま私に挨拶を返してくれる。
ポメラニアンの意味を本当の意味で理解した瞬間だったのかもしれない。
?「大人は気使えよ…」 #17→←早起きか夜更かしか #15
ラッキー歌みた・オリジ曲
AXF /サマータイムレコード
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いちごミルク(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2021年9月7日 0時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
るん - 宵似-よいじ-さん» まだまだ投稿したてですがそんな風に言って頂けて光栄です…!コメントもありがとうございます~! (2021年5月30日 20時) (レス) id: ca7dc5da1e (このIDを非表示/違反報告)
宵似-よいじ- - 何故投票は一回しか押せないのだろうか…。 世界観に引き込むのがとっても上手で思わずどんどん読み進めてしまいました!好きです!是非応援させてください。 (2021年5月30日 14時) (レス) id: 582bb38728 (このIDを非表示/違反報告)
るん - おかかさん» コメントありがとうございます!拙い小説ですが完結まで読んでくれると嬉しいです~! (2021年5月29日 6時) (レス) id: ca7dc5da1e (このIDを非表示/違反報告)
おかか - すごく好きです!これからも無理しない程度に更新頑張ってください^^* (2021年5月29日 1時) (レス) id: ef0e1184cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るん | 作成日時:2021年5月25日 16時