【2434】叶わない君と私の冴えたやり方

もしかしてママ…？ #12 ページ13

「あ、んー」

やっぱり恥ずかしくて小さく口を開けてもぐもぐと咀嚼して飲み込む。

こんな形で推しの手料理(であろう物)を食べる事になるとは…。

数日前の私に伝えても何妄想してるんだで終わりそうな話だが。

病人用なのかやっぱり味付けも薄い。

ふわふわの卵と柔らかくなったお米は食べ物を拒絶している喉にあっさりと流れていく。

「おいしい？味付けはちょっと薄いと思うけど…」

「あ、んぅ…おいしい」

かくゆうして手料理なるものを完食することが出来た。

「全部食べれてえらいね」

優しく頭を撫でられておでこに触れるその手が冷たくて心地いい。

「今日泊まっていくでしょ？僕食器片付けてくるかr…」

「い、いかないで…まだ…」

必死に絞り出した言葉は、熱となって空気に溶けていった。

完全に容量オーバーだ。

音を立てて湯気が出てもおかしくないくらい、身体が熱を持っている。

熱だと人肌恋しいと言うじゃないか。

今は熱のせいにさせて欲しい。

彼の顔なんて見れるはずもなくふかふかの布団に潜り直した。

「へ、っ！？」

困ったように漏れた声。

掛け布団と彼が擦れる音。

届いてはいるようだった。

彼は今どんな気持ちなんだろう。

彼女でもない女の言葉なんて引かれただろうか。

そんな考えがぐるぐる回って、とうとう耐えられなくなり布団からちらりと顔を出してみる。

叶くんの顔を覗いてしまった。

「…っとぇ…」

口を抑えてそっぽを向いて、頬を赤くしている、今まで一度も見たことのない顔を。

「…」

なんで、そんな顔。

「か、叶くん…？」

「いやっ、その…見ないで…」

やめて、やめてよ。

だって、そんなの。

「お願い…」

「っ！」

そんなの……期待してしまうじゃないか。

「僕優しいから寝るまで居てあげる…おやすみ」

照れているのかベットに突っ伏したまま弱々しく呟いている。

「おやすみ…」

珍しく耳まで赤い彼を後目にもう一度目を瞑った。

目が覚めたらすぐにでも帰ろう。

色々お世話になってしまったなぁ…。

でも、そんなことより。

今はこの照れくさそうな彼を、脳内に焼き付けておこうと思う。

再度頭を優しく撫でられる感覚が夢の中へと背中を押すように堕ちていった。

〜〜〜
僕のベットを占領して気持ちよさそうに寝ている彼女。

彼女というかまだ、僕のものではないのだけれど。

僕だって健全な男なのだから無防備とか色々思うところはある。

「早く僕のものにならないかなぁ…」

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