非常識なトラは底抜けに明るい ページ12
今日ここに来たばかりだから当然どこに向かっているかなんて分からなかった。けど私は夢中で走った。とにかくレゴシ君と顔を合わせられなくて出てきてしまったのだ。
「はぁっはぁっ…ここどこ。」
人気のないほう人気のないほうと道を選んで来てしまったからか、私は気づけば校舎裏にまで来てしまっていた。
荒い息を落ち着けようと壁に手をついて深く息を吐いていると、私以外の息遣いも聞こえてきた。
「一匹…いや二匹?しかも肉食獣…。」
さらに耳を立てるとトラの男女のようで、信じられないことに野外で情事に及んでいたのだ。
他の生徒が食事をしているからって嘘でしょ、しかもこんな場所で。
このまま盗み聞きみたいな行為は嫌なので、こっそり場所を移動しようと思って動いたその瞬間。全力で走っていたからか足がもつれて地面の石を蹴ってしまった。
「‼ちょっと、やっぱり誰かに聞かれたじゃなぃ!さいっていね、ビル‼」
その音で幸か不幸か二匹はこちらに気づき、行為をやめたのだが…やっぱり不幸だ。こんな修羅場に巻き込まれるなんて。
私もこのまま去ってしまおうかと考えていたその時、残された男がこちらに話しかけてきた。
「なんだよ、アイツもノリノリだったくせに。…まったく他獣の行為を盗み聞きっておマエもいい趣味してんな。おい、聞いてんのか」
話を続けながら男はこちらに歩いてくる。
「聞いてんのかよ!…っておマエ女かよ。」
「え。」
「なんだ、ふざけた野郎の冷やかしかと思ったらただの変態女かよー。」
「なッ‼変態はそっちでしょ⁉私は一人になりたくてここに来たのに、アンタがいるせいでなれないしこっちが文句言いたいわ!」
まさかの変態女呼ばわりに初対面にも関わらずキレた私を見てトラは面食らったような顔をした。が、急に笑い出し何故か私の横に腰を下ろしてきた。なんだコイツ。
「一人になりたがってた割にブチギレる元気はあるのかよ。で、なんで落ち込んでたんだ?」
「は?なんで名前も知らない獣に私のプライベートのこと話さなくちゃいけないの⁉」
私のもっともな正論にトラは「それもそうか。」と呟いてこちらに身体を向き直し私をまっすぐ見つめて言った。
「オレはベンガルトラのビルだ。二年。おマエ、一年か?この先輩になんでも話してみろよ!」
ビルと名乗ったソイツはニカッと笑った。
そのときの顔があまりにも明るくて、気づけば私は胸の内を話し始めていた。
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桜庭 - 続きはどうなりますか...! (8月3日 0時) (レス) @page23 id: b68e6ffcf4 (このIDを非表示/違反報告)
tsukishi773(プロフ) - くっ続きが見たいぃ" (2022年11月7日 9時) (レス) @page23 id: e89636a396 (このIDを非表示/違反報告)
レイカ - レゴシとの絡みに拝むばかりです… (2021年12月19日 2時) (レス) id: c7f724abcf (このIDを非表示/違反報告)
七瀬臨也(プロフ) - とても素敵な作品で続きが気になります( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ ) (2021年12月3日 1時) (レス) @page23 id: a0135bf0ac (このIDを非表示/違反報告)
えど(プロフ) - 続き楽しみにしてますー! (2021年11月7日 17時) (レス) @page23 id: 67d2f217ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きの | 作成日時:2020年3月23日 10時